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10月に行われた共産党大会における習近平総書記の発言がポイントだ(写真:新華社/アフロ)

中国の対外強硬姿勢は軌道修正された

外交は、世界中どこでも内政そのものだ。中国も例外ではない。

2017年10月18日、中国共産党の第19回全国代表大会が開かれた。5年に1度の党大会は、党のこれからの方針と体制を決めるとても重要な会議だ。その冒頭、習近平は総書記として第18期中央委員会を代表して報告を行った。この報告は、党内で何度も議論を経たものであり、現時点における中国共産党の総意といっていい。

そこで中国の外交を「中国の特色ある大国外交」と呼び、それに「平和的発展の道を堅持し、人類運命共同体の構築を推進」というタイトルをつけた。大方の予想に反して、この報告のどこにもいわゆる「核心的利益」への言及はなく、対外強硬姿勢を示唆する物言いはない。

2009年から2016年前半まで続いた中国の対外強硬姿勢は、ここにおいて軌道修正されたと見ていいであろう。

拙著『強硬外交を反省する中国』でも述べているが、私は中国外交について、中国が主張してきた「核心的利益」を全体的な価値体系の中でどう位置づけるかが最大の課題となると考えてきた。

「核心的利益」とは、2000年代の初めごろから使われ始めた言葉で、英語の“core interests”の翻訳でもある。中国の考える最も重大な利益とは何かを、米国側に正確に理解させたいという気持ちから使い始めたという。

当初その対象は国家主権と領土保全に限定されていた。だが、対外姿勢が強硬なものとなっていくにつれて、その中身も拡大していった。2010年秋には、中国外交部の有力者が「南シナ海は、中国の核心的利益だ」と断言したという話が世界を駆けめぐったこともあった。

自分が絶対に正しく相手が間違っているという世界をつくり、相手は自分の言うことを聞くべきだという立場を貫くならば、これだけ強大化した中国の行動は覇道以外の何ものでもない。必ず他国の「核心的利益」と衝突し、平和と発展の道は閉ざされるであろう。

外交は「妥協の芸術」であり、たとえ「核心的利益」の世界であっても、相手には相手の立場があることを認め合うことから始まる。中国は、もっと成熟し、この外交の世界の妥協の意味を理解したほうがいい。


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