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教育現場の描写がリアルだと話題の「先に生まれただけの僕」。12月16日(土)に最終回を迎える(編集部撮影)

「将来役に立たないことをなぜ学校で学ばなければならないのか?」――この問いに答えられる大人が一体どれほどいるだろうか。

「ぼくには夢があるので、大学には進学しません」この高校生の決断に対して、夢を追いかけることを応援し、「大学には行かなくていい!」と言える大人がどれくらいいるだろうか。では、「夢なんて甘ったれたこと言ってないで大学に行け!」という大人は?

「勉強したほうがいい」「夢を持つことは大切だ!」、そんな言葉は世の中にあふれている。しかし、このメッセージの背景や真意に一歩踏み込むと、そこには多くの葛藤がある。だからこそ、その葛藤には触れずに距離を置く。そんなことを聞かれても答えられないから、できるだけ聞かれたくない、それが多くの大人の本音ではないだろうか。

VUCA*の時代が到来し、先行き不透明でこれまでの正解が通用しなくなる中で、若者が持つ「学ぶことの意味」に対する疑問や「将来の夢と大学進学どちらを選ぶか」という悩みに、大人が向き合わなければいけない場面は増えていくだろう。

(*注:不安定で不確実で複雑で曖昧な現代社会を指す言葉。Volatility,Uncertainty,Complexity,Ambiguityの頭文字をとっている)

教育現場も、社会の大きな変化のなかで変革が求められている。主体的に学び、新しい価値を生み出し、自分たちの力で未来を創り出していける生徒を育てていくような、そんな教育が求められている。そういった教育が求められるとき、大人と子ども、先生と生徒の関係はこれまでとは一変する。大人がこれまで培った知識を伝える「伝達者」で、子どもはそれを受けとる「享受者」であれば、大人は「先に生まれた」存在であることでその立場を維持することができ、子どもは疑問を持たずに大人からの指導を受ける。

しかし、みんなが追い求める正解像がなくなり、ITをはじめ次世代のほうが詳しく、しかも可能性の大きな領域がどんどん広がるなかで、子どもたちは「学ぶ意味」や「将来への不安」をストレートに大人にぶつけてくるようになる。そしてこれまで通説だった「いい会社に就職するために勉強するんだ」「安定のためには大学に行け」という回答では彼らは納得しなくなっている。そのとき、大人が「先に生まれた」意味を改めて問われることになる。

教育現場で話題のドラマ「先僕」

現在放送中の日本テレビ『先に生まれただけの僕』は、嵐の櫻井翔さん演じる先生経験ゼロ、営業一筋の会社員が、所属企業の傘下にある私立高校の校長に就任するというストーリーだ。毎回、「スクールカースト」や「デジタル万引き」など学校にまつわる現代の問題を取り上げ、主人公がビジネスの論理を振りかざし解決しようとする。解決策のちぐはぐさや、先生からの反論も大胆に描かれているが、そのリアルさが教育関係者の中で大きな話題になっている。

脚本を手掛けた福田靖氏は、「HERO」「龍馬伝」「海猿」など、数々の人気ドラマや映画を手掛けたヒットメーカーであり、業界では知らない人がいない超有名人だ。

福田氏は今回ドラマの中で、これから多くの大人が出会うであろう葛藤や苦悩を先取りし、そのときのあるべき姿を示してくれているのではないかと思う。ドラマ史に残るヒット作を生み出してきた福田氏が、なぜいまあえて「学園もの」を選んだのか、本人に聞いた。


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