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塗装を終了した阪急電車の車体(撮影:久保田 敦)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2018年5月号「阪急マルーンを塗る」を再構成した記事を掲載します。

阪急電車のマルーンの車体色はその美しさが広く知られている。ダークで基本的には一色と単純ながら、その車体は人の姿を映す光沢があり高級なイメージを醸し出す。

阪急電鉄を訪ねるにあたり、そもそも塗装や塗料とは何か、その知識の一端を得ようと、(一社)日本塗料工業会(東京都渋谷区)を訪ねた。そこで示してもらった資料や説明をもとに、まずは塗料の役割、塗る目的から解説してゆこう。

アルミやステンレス車両に塗装することも

目的の第一は、「塗られるもの」の保護にある。すなわち木も鉄も、素材そのままでは時間とともに腐食劣化する。プラスチックも劣化する。塗装とは、その表面に塗膜を密着させることにより空気や水、太陽光線から遮断し、素材を保護し長持ちさせる。したがって、木に始まり鉄が主流となった鉄道車両も、その車体には塗装が必須であった。

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一方、ステンレスやアルミ合金は耐腐食性を特徴とする金属のため、機能的な面では塗装は基本的に必要ない。なお、アルミは酸化被膜を自然に作るので鉄のようにさびることはないが、まったく腐食しないわけではないので、塗装工程が組まれることも多い。

そして第二の目的に、美観を保ち、向上させることがある。「塗る」という比較的容易な方法で、素材に色、つや、滑らかさ、模様等を付け加えることができ、ゆたかなデザイン効果を生み出せる。蒸気機関車時代の鉄道は、黒にも近い濃い茶色の客車、黒い貨車が当然だったが、それと比較して電車の時代、いかにバラエティにあふれ美しく感じるようになったかは言うまでもない。この「装い」の観点から阪急電車もその一例であるように、保護以上の目的でのアルミ車体への塗装や、まれにはステンレス車に塗装する例も出現する。


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