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シーメンスの最新型近郊車両「デジーロ・シティ」。現在はドイツおよびオーストリアの工場で製造し、輸送されている(筆者撮影)

シーメンスは3月2日、英国内に鉄道車両製造のための新しい工場を建設する計画を発表した。建設予定地は英国北部ヨークシャー州のグールという町で、すでに高速道路M62号線のインターチェンジに隣接する27ヘクタールの土地を長期リースする契約を結んでおり、この新工場建設に対する投資額は2億ポンド(約295億円)に達するという。同社はまた、地元の雇用創出について、約250人が工場建設のために雇用され、工場完成後は車両製造のための従業員約700人を現地採用すると試算している。

英国シーメンスのCEO、ユルゲン・マイアー氏は会見で、将来の鉄道業界におけるシーメンス社の成功はここに鉄道車両工場を建設することにあると見ている、と述べている。同社にとって英国に工場を建設することは、それだけ重要なプロジェクトの一つと位置付けられているようだ。

大手他社はすでに英国工場保有

英国には、シーメンスと双璧を成す鉄道車両製造大手のボンバルディアが、中部ダービーにすでに工場を保有している。同社はカナダを拠点とした重工業メーカーとして知られるが、鉄道部門の本社はドイツのベルリンにある。主要市場が欧州全体であることを考えても、鉄道に関してはもはやカナダのメーカーではなく、ドイツのメーカーとして考えるのが自然だ。

そのボンバルディアの英国ダービー工場は、元をたどれば1839年に創業したダービー・ミッドランド鉄道の工場だ。同工場は1948年の鉄道国有化によって英国国鉄の工場となり、1970年には国鉄の鉄道車両製造を独占する国営企業ブリル(BREL/British Rail Engineering Limited)の工場となった。ブリルは1989年に民営化されたのち、1992年にスイスを拠点とする重電メーカーのABBが買収したものの、同社は1996年に鉄道部門を売却、ダイムラー・ベンツの鉄道部門と合併して新会社「ADトランツ」となり、さらに2001年に同社をボンバルディアが買収した結果、ボンバルディアの工場になったという複雑な経緯を持つ。


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