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海外子会社の所得にタックスヘイブン(租税回避地)対策税制を適用したのは違法としてデンソーが課税処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、同社が逆転勝訴した。最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は24日の判決で「子会社の業務に相当の規模と実体があった」と判断。名古屋国税局による約12億円の課税を認めた二審判決を破棄し、処分を取り消した。

対策税制は、税率が低い国・地域にある子会社の主な事業が「株式の保有」にとどまる場合、日本の親会社の所得に合算して課税する。子会社に経済活動の実体があるなど、一定の要件を満たせば適用されない。

今回の訴訟では、デンソーのシンガポール子会社に対策税制が適用されるかが争われた。

第3小法廷は判決理由で、子会社には東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の事業を効率化する目的があり、活動に経済合理性があったと指摘。「財務や物流改善などの業務は多岐にわたり、相当の規模と実体があった」と述べ、課税処分は違法と結論づけた。

判決はまた、対策税制で子会社の「主な事業」が何かを判断する基準について「事業活動の収入や所得、人数、店舗、工場などの状況を総合的に考慮するのが相当」との初判断を示した。

判決によると、シンガポール子会社は現地事務所があり、20人以上の従業員が地域統括業務を担当。税引き前利益の8?9割は株の配当が占める一方、地域の物流を改善する業務の売上額が収入の約85%に上った。

一審・名古屋地裁はデンソーの主張を認め、2009年3月期まで2年間の追徴課税処分を取り消した。二審・名古屋高裁は「子会社の主な事業は株の保有だ」と判断し、デンソーが敗訴した。

デンソーは「主張の正当性が認められた」とコメント。名古屋国税局は「裁判所の判断を謙虚に受け止め、今後も適正な課税に努める」とした。

10年の税制改正で、地域統括業務を行う子会社については主な事業が「株の保有」でも対策税制の適用除外となった。判決が同じようなケースで企業活動に与える影響は限定的とみられる。

デンソーは、今回とは別時期の約61億円の追徴課税処分の取り消しも求めている。名古屋高裁は10月18日の判決で国の主張を退け、デンソーが一審に続いて勝訴した。



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