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藤沢は敗戦を覚悟したという。「私の最後のショットが良くなかったので負けたと思った。相手に簡単なショットを残してしまった」。1点リードで迎えた最終第10エンド。先攻のLS北見のスキップ藤沢の2投目はハウス(円)内の手前側にあった日本の石にかすり、狙った位置より前に止まった。円心に最も近いナンバーワンは英国が握ったままだ。

おまけに藤沢のストーン(石)はガードに隠れていない。英国のスキップは、石を外にはじくテークアウトショットが得意なミュアヘッドだ。しかし、勝利が見えて力が入ったのか。日本の石を出すはずが、玉突きが起こり、円心にぽつりと残ったのは日本の石。LS北見の選手たちの涙と歓喜の輪が広がった。

「あと数センチ、石が曲がってくれたら、銅メダルは私のものだったと思う」とミュアヘッド。選手と感激を分かち合った日本のリンドコーチも複雑なコメントを残す。「ミュアヘッドにはダブルテークアウトのチャンスがあった。でも、難しいショットだったよ。彼女には気の毒だが、これがカーリングだ」

本来は攻撃的な英国が、石をためない守備的な戦いに徹する予想外の展開。膠着状態の試合が動いたのは第9エンドだ。藤沢の2投は相手のガードの石の裏にきっちり回り込む満点のものだった。ガードの石を使う難しいショットを強いられたミュアヘッドは2投目に失敗、先攻の日本が1点のスチールに成功した。

ショット成功率は藤沢の83%に対し、3度目の五輪となる27歳のミュアヘッドは65%。スキップ対決に完勝といえる内容に「準決勝の韓国戦はすごくいい試合ができた。私のショットが安定していたので自信を持って、自分のフィーリングを信じて投げた」。納得はしているが、不思議な思いは残る。「ほぼ負け試合。信じられない気持ち」。最後の1投は確かに危うかったが、そこは26歳の未完の大器、4年後以降の課題にしてもらおう。

(田中克二)



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