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【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の首脳会議が22日、開幕した。2019年3月の英国離脱まで残り約1年となるなか、環境の激変を避けるために英国をEU単一市場に残留させる「移行期間」を20年末まで設けることを承認。交渉の本丸である将来のEU・英の自由貿易協定(FTA)も、4月からの準備協議入りを承認する見通しだ。

首脳会議は2日間の日程で、ブリュッセルのEU本部で開いた。初日は28加盟国が参加し、米国の鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対応や、英国で起きた元ロシア情報員暗殺未遂事件などを協議。英国の離脱問題は、2日目に開く英を除く27カ国の首脳会議で取り上げる。EU側の首席交渉官であるバルニエ氏の報告を受け、離脱交渉の進捗を点検する。

今回の首脳会議は英国の離脱を巡り、まず離脱後の激変緩和措置である「移行期間」に関する首席交渉官レベルの暫定合意を首脳らが承認する。英国とEUは19日、離脱後も20年末までは英国をEU単一市場と関税同盟に残留させることで暫定合意した。

ただ、EU側は10月を目指す「離脱協定」の最終合意にこぎつけられなかった場合、移行期間の暫定合意を白紙に戻すとも強調する。最大の難題は英国の北アイルランドと、EU加盟国アイルランドの国境問題。英・EUは厳格な国境管理の復活を避ける方針で合意済みだが、具体策は見つかっていない。首脳らは、早急に具体策を示すようメイ英首相に求める見通しだ。

さらに、首脳会議では離脱交渉の本丸となるEU・英の「将来関係の枠組み」の協議入りを承認するため、EU27カ国側の交渉指針も採択する。EU側が首脳会議に向けてまとめた指針案では、英国との通商関係はFTAの交渉を目指す方針を明記。「関税ゼロや量的な制限なし」という貿易関係を目指すと盛り込んだ。

指針では、メイ英首相がEUの単一市場と関税同盟からの離脱を明示したのを受け、「摩擦は避けられない。残念ながら経済的な悪影響が生じるだろう」とも指摘。離脱後は「加盟国と同様の権利や恩恵を享受することはできない」とした。

金融サービスを巡っては、移行期間の終了後、英金融機関は単一の免許で自由にEU域内の業務ができる「単一パスポート制度」を使えなくなる。EU側は、英国のルールがEUと同水準と認めた場合に限り、EU域内の事業を認める「同等性評価」の仕組みを英国に適用する方針だ。

一方、英側は金融サービスルールの「相互承認」を求めるが、指針案の付属文書は「EUが一方的に」承認するかどうかを決めるという基本姿勢を示した。

交渉指針を承認すれば、EUと英国は4月にも将来協定の準備協議に入り、10月に合意事項を盛りこんだ「政治宣言」をとりまとめる方針。英国や欧州で事業展開する企業にとって影響の大きい通商論議が、ようやく本格化する。



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