ニュース本文


【ワシントン=中村亮】ポンペオ米国務長官は21日、ワシントン市内で講演し、イランの脅威に対抗するための包括的な政策を発表した。ウラン濃縮の完全停止や周辺国の武装組織への支援停止などを求め、イランが政策変更に応じるまで「過去最強」の制裁を続けると表明。欧州をはじめ、アジアや中東など各国に協力を求める方針を示したが、国際的な対イラン包囲網を築けるかは不透明だ。

ポンペオ氏は講演で、トランプ政権が離脱を決めた2015年に欧州などと結んだ核合意を「イランの核開発への野望を止められなかった」と指摘。新たな国際的な枠組みを目指し、(1)15年の核合意で認めていた低レベルの濃縮ウラン製造を含む完全な核関連活動の停止(2)すべての核関連施設への国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れ(3)弾道ミサイル開発の中止――などをイランに求めていく方針を示した。

中東で影響を強めるイランを封じ込めるため、内戦状態が続くシリアでの軍事拠点の撤収やイエメンやレバノンなどでのテロ組織への支援中止なども要求。拘束米国人の釈放やイランでの人権状況の改善なども盛り込む。こうした要求をすべて受け入れれば制裁を解除し、外交関係を回復させる用意があるとした。

ポンペオ氏は新たな枠組みの下でのイランへの国際的な包囲網を構築するため、欧州だけでなく、日本や韓国、インド、サウジアラビアなどにも協力を呼びかけていく方針を示した。ただ15年合意の下でのイランビジネスの継続を求めてきた欧州側の理解を得られるかは不透明だ。

さらにイランが米国の一方的な要求に応じる可能性は低く、新たな政策は非現実的との声もある。米国の核合意離脱後、中東ではイランとイスラエルの対立が先鋭化するなど緊張感が高まっている。米国の強硬姿勢が鮮明になったことで、イランがさらなる挑発行動に出て中東情勢が不安定になる危険もある。



記事一覧 に戻る 最新ニュース読み比べ に戻る