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 「羽田空港で特別機から、5人の拉致被害者がタラップから降りてきた」

 こんな文を読んだとき、校閲としては「タラップから」を「タラップを」と直したくなります。「特別機から」の「から」と「タラップから」の「から」が、ダブっているからです。

 「羽田空港で特別機から、5人の拉致被害者がタラップを降りてきた」

 これで一丁上がり、のようですが、実はまだ少し続きがあります。「おりてきた」の漢字表記は「降りてきた」でいいのか、についてです。 

 新聞の表記では、「おりる・おろす」は「大根おろし」「三枚におろす」など平仮名を用いるほかに、「下りる・下ろす」(上の対語)と「降りる・降ろす」(乗の対語)とを使い分けます。

 産経新聞の用字用語のよりどころ『産経ハンドブック』の「下りる」の項目を見てみると

 〈階段・坂・タラップ・土俵?を下りる▽リフトで下りる▽馬・木・2階・船・山?から下りる▽いかり・看板・シャッター?を下ろす〉

 など、上から下へ動くようなときや

 〈肩の荷・許可?が下りる▽腰・幕?を下ろす〉

 という用例が載っています。

 他にも貯金を引き出すのも「下ろす」。新しく○○するというときの「筆を下ろす」や「下ろしたての服」「書き下ろしの小説」などにも「下りる・下ろす」を使うように例示されています。



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