※日経エンタテインメント! 2023年5月号の記事を再構成
BMSG設立から間もない2020年10月10日に始まったファンコミュニティ「B-Town」。月額5000円の「Architect」と月額500円の「Resident」の2つのコースがあり、「Architect」ではBMSGの経営や今後の展開など、まだ世に発表されていない貴重な話が聞けるとともに、SKY-HIの手記やアーティストのインスタライブ、スタッフの話など、ここだけのコンテンツが発信されている。まだ歴史の浅いBMSGを応援し、ファンと共に歩んでいくような意味合いも強い。
その「B-Town」が、23年年3月、新たにオンラインサロンとして仕切り直しを行った。テコ入れに着手したのはなぜなのか。まずは、改めて当初「B-Town」の運営を決めた理由から聞いた。
「B-Town」を立ち上げた理由はたくさんあるのですが、1つの大きな理由は、自分が伝えたいことを発信する場が必要だったからです。
20年の段階で、僕はSNSでの情報の拡散のされ方に対して、諦めている状態でした。捻じ曲がった解釈がそのまま広がり、つまりは発信者と受信者の間で正しくコミュニケーションが行われるとは限らない。見る人が多ければそれは当然起こりうるのですが、そうしたSNSでのコミュニケーションを諦めざるを得ない気持ちになっていたんです。
そもそも誰もが目にできるSNSでは、参加者の性別・年齢・その人がいる環境などがまるで違う。例えば、アメリカから来日して間もない人にたこ焼きの話をするときには、たこ焼きはどんな食べ物かも伝える必要があるけれども、日本人にたこ焼きの話をする際にはその説明はいらないじゃないですか。本来、コミュニケーションってそうした前提条件や相手の状況によって全く違うアプローチをしないといけないと思うんです。それをオープンなSNSですることに限界を感じました。
でも、芸能全体の変革のためにBMSGを立ち上げた自分には、「何をやるのか」「何を問題だと思っているのか」「そのためにどうするのか」を発信し続けていく場所も必要でした。独立・起業した人間がどんなことをしているのかを発信するのも社会にとって大事だと思いましたし、数年後には、今やっていることの答え合わせもできるでしょう。そして視点を変えると、ゲームでもアニメでもマンガでもなく、1人の人間の人生をかけた、失敗するか成功するかも分からない現実をリアルタイムで見られる場なんてそうそうありません。
なので、発信すべきだという考えのもとに受信先の前提条件だったのが、「BMSGを応援してくれる人」となったわけです。しかもそのために大きなお金を払ってくれる方となると、冷やかしでは入りにくい。その場所で共通言語の持てるファンや応援者との密なコミュニケーションができたらと考えました。
月額5000円は高いと感じる価格設定かもしれません。しかし外部には非公開の情報も多く、「B-Town」で発信していることを隅々まで読み解けば、僕らがやろうとしていることを先にされてしまう可能性もあるような内容です。本当は「ちょっとBMSGに興味がある」という方にも気軽に入っていただきたい気持ちもあるのですが、そうした情報流出の危険性も考えて、ハードルを上げているところがあります。
「コミュニティとしての機能」を見直す時期に
誕生から約2年半、「B-Town」が「ファンコミュニティ」から「オンラインサロン」へと定義のし直しをしたことには2つの理由があった。1つ目は改めて機能と役割を明確化すべきだったことだ。
「ファンコミュニティ」という抽象的な言葉を使うことには、良さと悪さがあると思っていたんです。
良さで言えば、バッファが利く。立ち上げたばかりの会社だから、初期はコンテンツの種類もあまりなかった。当時はまだ僕も(Novel)Coreもそれぞれのファンクラブがありませんでした。当然いつファンクラブを作るかも議論し続けていたのですが、それまでは「ファンコミュニティ」があれば様々なことができると考えました。ファンクラブでもない、オンラインサロンでもない。その間を取って「ファンコミュニティ」としたんです。
ただ、アーティストの数が増え、応援してくださる方が増えていくと、「ファンコミュニティ」としての機能は難しくなりました。言葉が曖昧なゆえに、会員の方がB-Townに期待するものや要望・要求にもバッファが利いてしまう。つまり運営側と会員側にイメージのズレが生じるようになってしまう。マイナーチェンジは続けてきたのですが、今回、CAMPFIREさん内での運営から、完全自社運営に切り替えるタイミングで、リニューアルを図りました。
21年からファンクラブ、ECなど、地道に1つひとつ自社運営の体制を整えてきたのですが、昨年12月にほぼ形がまとまったので、ようやくB-Townにも着手できたというところです。
スタートから2年半、自社運営に切り替えるタイミングでリニューアルを行ったB-Town。後編では「オンラインサロン」と仕切り直しをした決断について聞く。