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一般に事業承継補助金の受給を希望する中小企業は、まず認定支援機関のコンサルタントに相談して経営革新を進め、認定支援機関に確認してもらい、補助金を申請します。ということで、制度の趣旨は「残すべき企業をメリハリ付けて支援しよう」なのですが、難しいのが残すべき企業かどうかの判断。

補助金申請の採択率(=採択数÷申請数)を見ると、導入初年度の平成29年度こそ11%とかなり厳しい審査が行われましたが、国が事業承継対策に本腰を入れ出した平成30年度以降、73?82%へと跳ね上がりました。

国の事務局は、個々の中小企業の実情はわかりませんし、そもそも中小企業経営に関する専門知識がありません。認定支援機関が「この会社は大丈夫です!」とお墨付きを与えたら、なかなか申請を不採択にしにくいところです。予算消化の圧力もあって、バラマキに近い状態になっています。

コンサルタントばかり得しても意味がない

コンサルティングの現場では、事業承継支援がバブル化しています。認定支援機関が中小企業経営者を集めて無料セミナーを開催し、「補助金が出ますよ。わが社のコンサルティングを受けませんか?」などと勧誘します。補助金獲得の実績をアピールして売り込み、手取り足取り申請書の書き方を指導します。というより、コンサルタントが申請書を書き、経営者はハンコを押すだけ、というケースも多いようです。

経営者が経営で困ったことがあったらコンサルタントに相談するというのが本来の姿ですが、事業承継支援(など公的支援)ではコンサルタントが補助金をエサに経営者に売り込むという逆転現象が起きているのです。

前回「独立に『成功する人』『失敗する人』の致命的差」で紹介したとおり、近年、中高年の会社員がコンサルタントとして独立開業するケースが増えています。そして、独立開業したコンサルタントの相当数が各地の商工会議所など認定支援機関に登録し、事業承継補助金やものづくり補助金といった補助金業務で生計を立てています。試しに「補助金獲得」で検索してみてください。

何のことはない、事業承継支援が実質的にコンサルタント支援になってしまっているのです(信念・愛情・熱意を持って中小企業支援に取り組んでいるコンサルタントが私の身近にもたくさんいます。上記は全体的な傾向なので、悪しからず)。

この状況をどう改善するべきでしょうか。正攻法は、申請の要件を厳格化する、事務局の目利きのスキルを上げる、コンサルタントや中小企業経営者のモラルを上げる、といった対策です。

ただ、そもそも国が「オタクは残るべき企業だから支援します」「オタクは潰れてもいい企業だから支援しません」と判断するべきでしょうか。そういう判断は市場原理に任せ、国はおせっかいな事業承継支援をやめて、市場環境の整備や廃業・失業者対策に専念するべきではないかと思います。


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