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 憲法改正の手続きを定める国民投票法の改正案が成立した。だが課題は山積みだ。賛成・反対の両派によるテレビやラジオのCMをどう規制するのかという課題も、今後3年の「宿題」として残された。議論は続くが、民放局でつくる日本民間放送連盟民放連)は、法による規制にも自主規制にも慎重な姿勢を示している。規制にはどんな問題があるのか。民放連の永原伸・専務理事に話を聞いた。

拡大する写真・図版永原伸・民放連専務理事 読売新聞東京本社政治部長、読売新聞グループ本社取締役社長室長、日本テレビ放送網取締役執行役員メディア戦略局長などを経て2018年から現職

――民放連は、憲法改正の賛否のCMの量をそろえる自主規制を行わない方針を示しています。CM規制が適切でないと、資金力に勝る政党などの主張ばかりが流れ、投票に影響が出てしまうとの懸念の声もあります。どのような理由でこの方針になったのですか

 「国民の表現の自由、知る権利にかかわる話だからです。国民投票のルール作りをすることはとても大切ですが、そのために、テレビなどのメディアを通じて、国民の表現の自由に制約を課すことになってしまえば、憲法改正のために憲法の大切な部分、21条の『表現の自由』を台無しにしてしまうことになりかねません」

国民投票法は第1次安倍政権時代の2007年に成立。投票は憲法改正の発議後、60?180日以内に実施されることになっており、この間の国民投票運動は原則として自由。

――普通の選挙と違い、憲法改正国民投票では、発議から投票日までの国民投票運動ができる期間が60?180日もあります。心配されているのは、この長い期間に、映像や音声でCMが繰り返し流されることの影響力です

 「国民投票法100条は、表現の自由や学問の自由、政治活動の自由など憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない、と定めています。つまり、この期間中に広告を含めて国民が様々な表現形態を持つことを不当に侵害してはいけないのです」

 「賛否の表明は政治的表現の自由ですし、国民一人一人が萎縮することなく自由に意見を戦わせることが必要です。仮に広告合戦のようになっても、言論に対しては言論で対処する、『言論の自由市場』で淘汰(とうた)されることに任せるべきです」

――放送事業者としての対応は

 「法律の趣旨に基づいて、何ができるかは考えてきました。国民投票法で投票日の14日前から国民投票運動のCMが禁止されているのは、投票日に近すぎると『言論の自由市場』で淘汰するだけの時間的な余裕がないので、CMを禁止してクールダウンする時間をつくるということだと理解しています」

 「一方で、直接的に賛否を呼びかけるのではなく、『私は憲法改正に賛成です』『反対です』という意見広告は禁止されていません。これでは視聴者が混乱してしまいます。ですから、2018年に民放連としてまとめた基本姿勢では、こういった意見広告も自主的に投票日の14日前からは取り扱わないこととしました。法律よりも踏み込んでいます」

拡大する写真・図版国民投票でのテレビやラジオ、インターネットのCM・広告

 「さらに19年には、視聴者の心情に過度に訴えかけることで冷静な判断を損なわせ、事実と異なる印象を与えると判断するCMは扱わない、国民投票運動CMや意見広告と明記する、特定の広告主のCMが一定の時間帯に集中して放送されることがないよう特に留意する、などのガイドラインもつくりました」

 「ここまでが、放送業界の自主規制としてできることです。国民投票法100条で『不当に侵害しない』とされているのに、これ以上の勝手なルールはつくれません。『責任分界点』という言葉がありますが、ここまでは業界の自主規制。ここからは、立法府でご議論いただくことです。もちろん、過剰な規制にならないようにという前提です」

――CMを出される側の放送局に規制をかける以外に方策はありますか

 「広告を出す政党が自らの取り決めでCM出稿量を自粛したり、量を調整したりするのなら、国民の表現の自由は脅かされないのではないでしょうか。政党の広告出稿だけを規制するのなら、必要最小限の規制という意味で合理性があります」

 「これには、すでに参考になる事例があります。例えば、たばこメーカーは、日本たばこ協会の自主基準に沿って、テレビやラジオだけでなく、インターネットでも銘柄広告を全面的に自粛しています。貸金業界も、各放送エリアでの月間の上限本数を定めて自主規制しています。このように、たとえばテレビCMは月間100本まで、のように出稿側が決めれば、賛否の量のバランスの面でも現実的な解決策になるのではないでしょうか」

――そもそも、放送局がCMの賛否の量を均等にすることはできるものなのでしょうか

 「実際のCMの売り方や買い…

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