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私は不妊治療を決意し、2月から病院選びを始めました。昨年4月に不妊治療が保険の適用対象となってから間もなく1年。ハードルが下がったこともあり、この1年で患者が急増しています。さらにロシアによるウクライナ侵攻や新型コロナウイルス禍で薬剤の供給に影響も。病院選び、治療費用、仕事との両立……。当事者の視点に立つと、不妊治療のハードルはまだまだ高いと感じています。【酒井志帆、37歳】
シリーズ「産む、産まない、産めない?私の場合」は、産むことに関し、悩んだり決断を迫られたりした経験した女性たちの物語を通じ、ジェンダー格差や妊娠・出産・中絶、子育てを巡る問題を考えます
昨年4月以降、それまでは不妊の原因を調べるための検査など一部に適用されていた保険が人工授精や体外受精にも拡大されることになった。
それまで受診をためらっていた私は背中を押された。治療方針や実績などの情報収集のため、2月以降、不妊治療を専門とする名古屋市内の三つのクリニックの説明会に参加した。
各説明会の参加者は私と同世代とみられる10?25人ほどで、夫婦そろってや女性1人で来ているケースなどさまざま。
「うちの患者さんの平均年齢は40歳くらい。5年、10年前だったら不妊治療しなくても妊娠できる人ばかり。そういう人がいっぱいいるのが今の現実です」。説明会での医師の言葉が強く印象に残っている。
2021年人口動態統計によると、第1子を産む女性の平均年齢は過去最高の30・9歳。この40年で4・5歳上昇した。また、日本産科婦人科学会の調査では20年の不妊治療による出産率は30歳が22%、40歳が9・9%、43歳では3・7%に低下する。
「若いうちから自分の体のことを知って、卵子凍結などライフプランを立てることが重要です」
私は34歳で結婚したが、医師のこんな指摘に複雑な気持ちになった。小学生の子どもを持つ母親が多い同級生と比べても遅い結婚だ。自分は将来希望する妊娠に対し、こ…