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日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。5月19〜26日の記事では、慶應義塾大学法学部教授の細谷雄一さんが「『法の支配』維持へ結束強化」を読み解きました。このほか「G7首脳、原爆資料館を訪問」「ウクライナにF16戦闘機」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。振り返ってみましょう。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)
「『法の支配』維持へ結束強化」をThink!


【細谷雄一さんの投稿】これまでの7回の日本が議長国となったG7サミットの中で、最も意義の大きな、そして最も大きな成功を収めたサミットだと考えます。「自由で開かれた法の支配に基づく国際秩序」という岸田政権が掲げてきた理念をその合意文書の中核に位置づけ、さらにゼレンスキー大統領のサプライズの対面参加の発表により世界の注目を集めました。そのゼレンスキー大統領がインドのモディ首相と個別の首脳会談を行うなどして、インドやブラジルなどややロシアに同調的な動きを示した諸国をG7の側に引き寄せたのも重要な意義です。さらに、ヒロシマで平和記念公園で慰霊碑に献花し、間接的にロシアの核使用を牽制するという、重要な効果が示せました。
「G7首脳、原爆資料館を訪問」をThink!


【岩間陽子さんの投稿】ロシア、北朝鮮が戦術核使用の可能性に言及する中で、G7首脳がそろって広島平和記念資料館を訪れ、原爆慰霊碑に献花したことの政治的意味はやはり大きいと思います。世界的に安全保障環境が厳しくなる中で、「抑止」の役割を考え直さざるを得ず、その中で核兵器にどのような役割を与えるのか、というのは、日本自身が取り組まなければいけない課題です。広島で、核兵器が使用された場合の被害の大きさにG7のリーダーが思いを一つにするということは、それだけに全体としての抑止力強化や、対話のための外交努力をなお一層強化していく重い責任を、ここにいる全員に担わせていることになると思います。
「ウクライナにF16戦闘機」をThink!


【高橋杉雄さんの投稿】F-16であれば、西側の各種ミサイルをフルスペックで使うことができるようになります。特に、対レーダーミサイルHARMをフルスペックで使えれば、ロシア側の防空能力を大きく低下させることができます。ただ問題は訓練と整備です。いま既にパイロットであっても、機種転換訓練には2〜3ヶ月かかります。整備兵の訓練やインフラ整備にはもっとかかるかもしれません。また、前線で戦っているパイロットを引き抜いて機種転換訓練を行う場合、前線の戦力が低下するという問題があります。このあたりの問題はかなりきちんと準備して取り組んでいく必要があります。
「ホンダ、F1に5度目参戦」をThink!


【中西孝樹さんの投稿】2022年末まで撤退貫徹で次世代型PU開発は全く実施してない状況でした。流れが変わった背景は3点あります。第1に、不退転の覚悟で進めたZEV100%の成果が過去2年間で大きく進んだことです。EVの手の内化を第一義に進め、その成果を確認し、ICEの技術延長へのゆとりが生まれてきたこと。第2に、2025年までに7%の営業利益への復帰に目途がついてきたこと。第3は、やはり欧州のe-Fuel容認への修正で、EVだけではないという道筋が見えたこと。マルチソリューションとは目的ではなく結果です。優先順位はEV→FCEV→e-Fuel→水素で事業を確立することではないでしょうか。企業ブランドへも貢献します。
「メガバンク、PBR1倍割れに危機感」をThink!


【森幹晴さんの投稿】PBR1倍割れ問題は大手行にも重い経営課題を投げかける。過去二番目の純利益を上げてもPBR(株価純資産倍率)は0.6倍前後で推移。純資産は解散価値なので、今すぐ上場廃止をして会社を解散して資本金を株主に返した方がよい、というのが市場での評価といえる。好業績だけでは株価が上がらない時代になった。保有する現金の価値をどう高めるか。株主還元とバランスを取り、将来の株主価値を生む成長投資をいかに語れるか、それが経営陣に求められる役割となった。低金利政策は当面継続が予想される。それは所与として他行との違いを打ち出せるか。大手行としての規模を維持しながら、最適な株主還元、成長投資とのバランスが求められる。
「少子化財源、消去法の保険上乗せ案」をThink!


【桜田謙悟さんの投稿】日本の社会保障制度は、租税負担が小さいため、現役世代への負担の偏りと赤字国債に頼る構図にある。現役世代の社会保険料はこの30年間で1.8倍まで増加。可処分所得を圧迫し続け、将来不安の一因にもなっている。少子化対策は日本の最重要課題であり、積極的に施策を推進していく必要がある。一方、社会保障制度を含め持続可能性を担保するためには、消去法で取りやすいところから取るといった現役世代に偏った負担構造は見直さないといけない。増税については世論反発が根強く、経済を腰折れさせないタイミングを見る必要はあるが、消費者が広く薄く負担する消費税を中心とした歳入構造への転換についての議論まで先送りすべきではない。
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