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【パリ=白石透冴】世界保健機関(WHO)の独立調査パネル(委員会)は12日、世界的な感染拡大となっている新型コロナウイルスの対応について検証した最終報告書をまとめた。集団感染が最初に発生した中国に加えて、国際社会やWHO自身も初期対応を誤ったことが感染拡大につながったと指摘した。早期の収束に向けて主要国を中心にコロナ対策の国際的枠組みへ資金を拠出するようにも提言した。

報告書では中国について、2019年12月に武漢市の卸売市場でクラスター(集団感染)が見つかった後の対応を問題視した。市場関係者以外にも感染者がおり人から人への感染が示唆されたが「市民の移動制限を本格的に求めたのは20年1月23日以降だった」とした。「症例などについての情報が迅速に共有されていなかった」のが一因とも指摘した。ウイルスの発生源について「コウモリが最も考えられる」とした。

WHOの対応遅れにも言及した。WHOは感染確認から約1カ月たった1月30日に緊急事態宣言を出したことに「時間をかけすぎた」と批判した。中国側がWHOに圧力をかけて見送るよう迫ったとの報道もあるが、報告書では言及しなかった。WHOは人から人への感染の可能性をより強調し、各国の警戒を促すことができたはずだとも指摘した。

各国の対応遅れも感染拡大を許した原因とした。WHOの緊急事態宣言直後の20年2月は、感染拡大を止める重要なタイミングだったが、各国は厳しい対策を取らず「失われた1カ月」となった。事態を見守る方が感染対策を取るより安上がりだったことなどが背景だったと批判した。

WHOはコロナ禍を早期に収束させるために、ワクチン分配を柱とする新型コロナ対策の国際的な枠組み「ACTアクセラレーター」の資金不足を解消すべきだとした。診断、治療に必要な経費も含め21年だけで190億ドル(約2兆円)が必要になるとみられており、先進7カ国(G7)が6割を拠出し、残りは20カ国・地域(G20)などが負担することを提案した。

WHOによる武漢市での本格的な調査開始が、中国政府の消極的な姿勢で約1年もかかったことを受け、パネルは中国への直接の批判は避けたもののWHO改革を呼びかけた。事務局長の権限を強化して任期を5年から7年に伸ばす代わりに、再選を認めないという案を示した。現在のWHOは加盟国にとって強制力のある判断ができず、危機に対応できないとの指摘がある。

報告書ではワクチンの技術移転や特許権の一時放棄も求めた。今後の感染症のパンデミック(世界的大流行)に備えた新たな国際制度の必要性や、対策に向けた枠組み条約の締結なども求めた。

パネルはWHOの要請でコロナ拡大後に設置。ニュージーランドのヘレン・クラーク元首相やアフリカ・リベリアのサーリーフ元大統領など13人をメンバーとする。21年1月に中間報告を発表しており、中国の初期対応について「もっと厳格な対応を取るべきだった」などと指摘している。



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