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それも踏まえたうえでのもう一つの理由を挙げよう。それはマツダにとってCX-3の上位車種である「CX-5」との価格差があまりないことだ。エンジンや駆動形式によって異なるが、マツダのホームページで確認できる限り、CX-3の価格帯は車両本体で210万?303万円台、CX-5は249万?352万円台。CX-3の上位グレードならCX-5の下位グレードとバッティングする。数十万円を足せばCX-5が買えてしまう。

CX-5のほうが見た目は迫力があり、室内も広く、走行性能も高い。クロスオーバーSUVが人気を呼んでいる理由の1つには機能性とか実用性を越えたところで、デザイン面でのカッコよさとか押し出しの強さなどが重視されている面もある。乱暴な言い方をすれば「クロスオーバーSUVはカッコで乗るクルマ」。CX-3を検討したユーザーが「同じマツダ車なら」とCX-5に目が向くケースはあるだろう。

・CX-5
全長×全幅×全高?4545×1840×1690mm
室内長×室内幅×室内高?1890×1540×1265mm

CX-3のターゲットとする客層は誰なのか

マツダがCX-3のターゲットとする客層は誰なのか。開発主査を勤め上げてきた冨山道雄氏に聞いてみた。

CX-3の運転席(筆者撮影)

「CX-3はシティーユースからロングドライブまで使われるというニーズを考えながら提供しています。メインターゲットは若い人とシニア層でどちらかと言うと前席優先で使われるお客様。特にファミリー的なユースや後部座席を重視されるお客様や室内空間を重視されるお客様はCX-5というそういう考え方です。CX-3はコンパクトなんだけど上質ということで、それに見合った対価をいただこうという価格設定となっています」(冨山氏)

このコメントを聞いて、私はすんなり納得できなかった。CX-3を単体で見てみると、気品ある美しさと先鋭さを極めたすばらしいコンパクトSUVではある。しかし、他社競合としてC-HRやヴェゼル、社内競合としてCX-5を比較検討されてしまうことは必然で、その結果、CX-3は何とも悩ましい立ち位置に追いやられてしまっている。

それは、今回のビックマイナーチェンジを経ても変わらない現実なのではないだろうか。フルモデルチェンジ(全面改良)しない限り、車体の骨格そのものをつくりかえることも、デミオっぽい印象を大きく刷新することもできない。近年、自動車業界で評価を高めてきたマツダのシャープなデザインが、CX-3においては効果的に働いていないように見える。

先川 知香 モータージャーナリスト

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さきかわ ちか / Chika Sakikawa

初めて見たバイクレースでマシンをバンクさせながら膝を擦って進入していくコーナリングを自分もやってみたいと思ったのをきっかけに、マシンを操ることの面白さを知り、その面白さを多くの人に伝えるべくモータージャーナリストを志す。現在の対象は2輪から4輪までと幅広く、Web や紙媒体で執筆中。愛車は Kawasaki Z250 とGASGAS、TOYOTA86 MT 仕様。休日は愛車でのサーキット走行やトライアルにも挑戦中で、公私共に乗り物漬けの日々を送る。

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