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地上時代の東横線渋谷駅(写真:digi009 / PIXTA)

貨物駅があった場所に埼京線ホームが設けられたことはわかった。だが、跡地を利用したというだけでなく、埼京線が渋谷に乗り入れた当時は山手線ホームと並ぶ位置にホームをつくれない理由があった。東急東横線渋谷駅の存在だ。

かつて山手線ホームの東側には、高架の東横線渋谷駅があった。同線の渋谷駅は2013年3月16日に地下化されたが、それ以前は山手線渋谷駅と東横線渋谷駅が山手貨物線をはさむ形となっており、山手線と並ぶ位置にホームを設置する余裕はなかったのだ。

埼京線のホームを山手線ホームと並ぶ位置に移設することが可能になったのは、東横線の駅が地下化され、ホームをつくる場所が空けられたためだ。

やっと解決する「遠いホーム」

ホームの移設計画は、東横線渋谷駅跡地を含む渋谷駅周辺の大規模な再開発と連動している。2003年に渋谷区がまとめた「渋谷駅周辺整備ガイドプラン21」は、埼京線の駅について「南側に偏心しており、乗換えやまちへのアクセスが不便」と指摘し、東横線跡地を活用した埼京線ホームの北側(山手線ホーム寄り)への延伸が「計画案」として記載されている。

そして、2008年の「渋谷駅街区基盤整備方針」では、駅施設の「鉄道路線間の乗り換え利便性の向上」「わかりやすく快適な駅空間の形成」などを目的とした整備内容として、山手線ホームの1面2線化や東京メトロ銀座線ホームの移動と島式化などとともに、「埼京線ホームを山手線ホームと並列化」することが盛り込まれた。

渋谷駅とその周辺では大規模な再開発工事が進んでおり、全体の工事終了は2027年を予定している。現在は工事のため渋谷駅周辺はわかりにくくなっているが、工事が終われば動線のスッキリとした駅となるだろう。

埼京線ホームの移設もその流れの中で進み、2020年には山手線と並ぶ。そして「渋谷駅の埼京線ホームが遠い」という問題が、開業から約25年を経て解決されるのである。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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