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二つ目の悪材料は、主に欧州からやってきた。6月20日(木)にドイツのダイムラー社は、米中間の貿易摩擦を要因として、2018年の自社の利益見通しを下方修正した。米中間の貿易摩擦で、なぜドイツの自動車会社が収益見通しを修正するのか、といぶかしく感じた方も多いと思う。

ダイムラー社は、米国で生産した自動車を多く中国に輸出しており、米国産としてダイムラーの車に中国が報復関税を課すおそれが強まったためだ。Evercore ISI 社の調べによれば、フィアット・クライスラーやフォードなど米国メーカー(フィアット・クライスラーは半ば欧州だが)の米国から中国向けの自動車輸出額は10億ドルに満たないものの、ダイムラーは米生産車の中国向け輸出額が約30億ドル、BMWに至っては40億ドル弱であるという。

加えて、EU(欧州連合)は、米国による欧州産鉄鋼・アルミ製品への関税措置に対する報復関税を、22日(金)から発動すると表明した。これにより、米中間のみならず米欧間でも貿易摩擦が広がるという懸念が台頭した。前述のように、20日(水)まで堅調であったナスダック総合指数も、21日(木)から下落に転じている。

それでも、ニューヨークダウ工業株指数の21日(木)の下落やそれを受けた22日(金)の日経平均株価の下落は、前述の「一つめの谷」に比べて小幅であり、やはり市場は比較的冷静であったとも言える。

米政府内の一部に「態度軟化」の動きも

このように、先週の世界市場の動きは、2回の波乱に見舞われながらも、特にパニック的な様相も見出しにくかったと言えよう。実際のところ、米国が強気の姿勢を修正する可能性がある。

中国は大豆などに対して、欧州はウイスキーやオートバイに対して、報復関税を課す意向だ。これは、共和党の地盤となる地域の産業を狙っている。このため、おそらく中間選挙の逆風になると考えた共和党の有力議員から、批判が上がっている(たとえば、下院歳入委員長のケビン・ブレイディ議員や、上院財政委員長のオリン・ハッチ議員など)。該当する産業からは、政権に対して、懸念の声が寄せられている。


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