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フィリピンの「比島戦没者の碑」で慰霊される天皇・皇后両陛下(写真:ロイター/アフロ)
今日、8月15日は終戦の日。戦没者を追悼し、平和を祈念する日です。あの夏から73年、戦争を知っている世代が少なくなっています。「戦争に近づかないために、日本人は、73年前に終わった日本の戦争について学び直すべきである」と訴え続け、著書に『戦争の大問題』がある元中国大使、元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏に、二度と戦争をしないために心にとどめておくべきことを語ってもらいました。

平和を求め続けた今上陛下の思い

来年4月末に今上陛下は生前退位される。

今年の8月15日が、天皇として臨まれる最後の終戦記念日、全国戦没者追悼式となる。陛下の平和への思いの強さは、国民のだれもが知るところだ。陛下ご自身も、折に触れてその点について言及されている。

80歳を迎えられた誕生日の会見では、「やはり最も印象に残っているのは先の戦争のことです。私が学齢に達した時には中国との戦争が始まっており、その翌年の12月8日から、中国のほかに新たに米国、英国、オランダとの戦争が始まりました。終戦を迎えたのは小学校の最後の年でした」と振り返っておられる。

物心がつきはじめた3歳のときに盧溝橋事件(1937年7月7日に北京近郊の盧溝橋で起きた日本軍と中国軍との衝突事件。中国では「七七事変」と呼ばれている)が起こり、日本は中国と戦争状態に。この戦争は1945年8月15日まで続いた。陛下のご幼少時代は戦争とともにあったということになる。

今上陛下の平和を願う原点がここにあることは疑いない。

「日本は戦争を起こしてはいけない。戦争に近づいてもいけない」と、私はこのオンライン記事でも何度となく繰り返し述べているが、その思いの原点は同じように思う。私が就学年齢となったときには、すでに日本は連合軍と開戦して3年が過ぎており、日本全土が空襲の脅威にさらされていた。私自身も空襲体験者である。

いま日本は再び戦争のできる国になろうとし、戦争に近づこうとする動きがある。私は、この動きを大変危惧している。ここで今上陛下の歩んでこられた平和への道のりを振り返り、そのお気持ちを共有したいと思う。


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