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AIの進化が人類にとって思わぬ事態を呼ぶかもしれない(写真:metamorworks/iStock)

たとえば「やがてはAI(人工知能)が人間の能力を超える」とか、あるいは「2045年には人工知能は人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達し、人間の仕事がAIに奪われる」など、AIと共存する未来についてはさまざまな推論が存在する。

しかもそれらは少なからず「常識」のように思われている節があるだけに、私たちは時として漠然とした不安に襲われたりもする。「いつか自分の仕事がなくなってしまうのではないか?」というように。

だが、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)の著者、新井紀子氏は、そんな話を真っ向から否定する。

AIは神に代わって人類にユートピアをもたらすことはないし、その能力が人智を超えて人類を滅ぼしたりすることもありません、当面は。当面はと言うのは、少なくともこの本を手に取ってくださったみなさんや、みなさんのお子さんの世代の方々の目の黒いうちにはということですが、AIやAIを搭載したロボットが人間の仕事をすべて肩代わりするという未来はやってきません。(「はじめに」より)
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

なぜなら、AIはコンピュータであり、コンピュータは計算機であり、計算機は計算しかできないから。つまりはそのことを理解していれば、ロボットが人間の仕事をすべて引き受けてくれたり、人工知能が意思を持って人類を攻撃したりするといった考えが、単なる妄想にすぎないことはすぐにわかるというのである。

新井氏は2011年に、「ロボットは東大に入れるか」と名づけた人工知能プロジェクトを開始した数学者。ロボットの「東ロボくん」を主役とするそのプロジェクトのことは多くのメディアに取り上げられたので、ご存じの読者もいるのではないかと思う。

東ロボくんの偏差値が上昇

まず、このことについて注目すべきは、スタートから7年の歳月を経て、東ロボくんが「成長」したという事実だ。2013年に初めて“受験”した代々木ゼミナール「第1回全国センター模試」では全国平均を大きく下回って偏差値は45だったものの、3年後の2016年に受験したセンター模試「2016年度進研模試 総合学力マーク模試・6月」では平均得点の437.8点を上回る525点を獲得し、偏差値も57.1まで上昇したというのだ。


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