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学内を案内してくれた千葉出身の4年生と韓国出身の1年生(筆者撮影)

APUに通うことで、学生にはどんな変化が期待できるのだろうか。

「日本のほとんどの大学は7割ほどが地元生ですが、APUは大分県出身者が1割で、9割は日本や世界中から集まっている。

つまり、みんなホームを出てアウェイで生活していて、寄る辺がなく、忖度が生まれない。価値観と常識、言葉が違う中で生きていくためには、何でも伝えなければいけないし、人と違うことが好ましいと思える環境なんです。

だから、おとなしい子が積極的になったとか、不登校だった子が生き生きと通っているという話はよく聞きますし、どこでもたくましく生き抜く力が身につくのではないでしょうか」

「宗教や政治的な対立がないかとよく聞かれますが、大きなトラブルは開学以来1回もないんですよ。まあ、学生の口喧嘩くらいはあるだろうけれど。みんな自分の人生の目標に向かっていて、自分の思いをどう伝えるか、他人とどこで折り合い協力するか、わかり合う力がすごくついているのでしょう。

単一の文化や価値観から、新しいものは生まれない。ここでは常識や価値観がぶつかり合うことで、今は当然とされている常識が変わっていく。大都市のメジャーな価値観から逸脱して、この辺境から中央を眺めていることがいい。しかも、眺めている人たちのバックグラウンドや考えが違うのもいい。僻地のダイバーシティは、新しいものが生まれる最高の環境だと思います」

APUの学生たちが変えた別府市

APUは地方さえも変えた。人口12万人のうち6000人がAPUの学生という別府市は、“多文化共生の国際都市”に。国際イベントでは学生がボランティアとして活動し、大分県国東半島宇佐地域が世界農業遺産に認定されるように推進したのはイラン出身の准教授だった。

また、APUには500人にのぼるといわれるムスリム(イスラム教徒)の学生がいる。

ムスリムフレンドリー認証を取得したAPUカフェテリア。ハラールメニューが充実している(筆者撮影)

ムスリムは1年のうち1か月間の断食、1日5回の礼拝など様々な習慣があり、基本的にハラール(イスラム教の教義に従って調製された食品)しか口にしない。

「ムスリムフレンドリーという考え方をご存知ですか?

完璧にはできなくても、対話しながらできるだけ相手に歩み寄る姿勢のこと。多様性にも適応できますし、私たちはこの考え方を大切にしています」

APUと別府市はタッグを組んでムスリムフレンドリー化を進め、全国から注目を集めている。


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