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対してダイハツが担うのは、新興国マーケットである。第一に安いことが重要だ。そして立派に見えることや車体が大きいこと、大勢乗れることが求められる。だから小さくてもリアシートが重要だ。商品企画としてこれはかなりキツい。新興国でなくても、国内マーケットの軽自動車はこれに近い。安くても立派に見えるとか、人と荷物がいっぱい積めるとか。それで燃費も良くなければならない。だから軽自動車には巨大な箱型のハイトワゴンかつメッキだらけのオーバーデコレートモデルが増えていく。

いずれにしてもトヨタアライアンスが、ダイハツをグローバル戦略の中にポジショニングしたことによって、プレミアムコンパクトとベーシックコンパクト。同じ企業グループの中でそれぞれ受け持ちが明確化した。

そういう新しい背景の中で、ダイハツがミラトコットで出した回答は、ベーシックコンパクトの原点回帰である。背伸びして飾り立てるのをやめて、シンプルで愛着の持てる道具に徹する。そういうチャレンジを行ったのがミラトコットだ。

必要な広さは確保するが無駄に大きくはしない。全長・全幅が規制された軽の場合、大きくするとはすなわち背丈を上げることだから、重くなると同時に重心が上がる。車幅を広げられればテコの原理で柔らかいバネが使えるが、全幅を1ミリも動かせない軽の場合、バネを固めるしかなく、ストレートに乗り心地が悪くなる。

トコットでは、車高を1530ミリに抑え、ちゃんと動く足に仕立てた。それでも居住性は十分高い。カローラの乗り降りは首をかがめなければならないが、Aピラーをしっかり立てたトコットではそのまますっと乗り降りできる。

トコットは見晴らしの良い着座姿勢と、広いガラス面積、目視しやすく車両感覚がつかみやすいボディ形状などの基本に徹底的に回帰した。もちろん失うものはゼロではない。それは後に書いていこう。

見下ろしてみる

2台を見下ろしてみるとボディの基本が非常にわかりやすい。カローラは前後に絞ったラグビーボールシェイプであり、トコットは真四角だ。

ボディの基本が非常にわかりやすい(筆者撮影)

なぜそんなことが起こるのかといえば、軽自動車はそもそも4つのタイヤで走る機械の寸法として制約が異常だからだ。ダイハツのせいではなく法定規格がおかしい。だから軽自動車は2座のスポーツカーであろうと、トラックであろうと、クロカンであろうとすべてのクルマが、全長3395ミリ、全幅1475ミリとぴったりの寸法を持つ。寸法を余す余力がない。ボディシェイプを丸くはできない製品なのだ。


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