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第2の観点は女性の権利である。

当初の取材で、文部科学省大学入試室は「選抜方法はできる限り募集要項に記入すべきで、条件を公開せずに入試が恣意的に運用されているとすれば望ましくない」(読売新聞)としている。このコメントが求めているのは、募集要項への記載であって、差別の廃止ではない。これで女性の権利は守れるのか。2段階に分けて考察しよう。

まず、実際に起きたことへの評価である。大学入学者選抜実施要項(平成30年6月4日文部科学省高等教育局長通知)は入学者の選抜について、「公正かつ妥当な方法によって、入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定する」としている。一律に女性を減点することは、公正かつ妥当でもなく、多面的・総合的でもない。なぜ文科省はそう指摘していないのか、疑問に思える。

推測すれば、恣意的に女性を排除してはまずいが、仮に男女別の定員を定めていれば、その範囲で女性合格者を制限することが可能であったと示唆しているのであろう。 だが百歩譲って男女別定員が免罪符になるとしても、そもそも東京医大はその定員を定めていない。どう解釈してもこの入試差別は、不当である。

文科省が医科大学の公共性を軽視している

次に、では仮に「女性は3割」と定員を定め、さらに「それを超えぬよう性別で成績を調整する」と募集要項に明記すれば、正当化されるのか。

東京医大は、同好会のような私的集合体ではない。学校法人として税制の優遇と公費による助成を受けている。さらに、卒業者(見込みを含む)は、医師国家試験の受験資格を得る。すなわち、医師免許取得の要件を付与する権限が大学にある。 その医科大学の負う社会的責任は、入試選考方法の説明にとどまるものではない。学府として、女性の教育を受ける権利を尊重すべきことは当然である。加えて、「医師国家試験受験資格の付与」という公共的役割を担う以上、職業選択の平等性を担保する責任もある。

上述した規定が募集要項にないのは、内容に正当性がなく、公表に堪えないと当事者も認識しているためと考えられる。現実にこの内容が報道された後、東京医大は謝罪と是正に追われている。問題は公表の有無ではなく、選考内容が女性の権利を不当に害するものであることだ。


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