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一方、輸送人員が大きく減少しているのに対して、実はタクシーの車両数はそれほど大きく減ってはいない。

車両数は2002年2月の規制緩和以降は増加したが、確かに2006年をピークにして、その後は減少を始めている。ただ、1989年に約26万台だったものが、2016年に23万台に減った程度で、変化としては9%減少したにすぎない。輸送人員数が56%も減ったのとは大きな差である。

こうして見ると、タクシー業界の再編は極端に進んでいないことがわかる。

業界首位の第一交通産業グループの2017年6月末時点のタクシー認可台数は8482台だ。しかし、同社の台数がタクシー業界全体に占める比率はわずか4%に満たない。また業界第2位である日本交通グループは、2017年5月末現在でタクシーが5424台(うち連結会社3429台および業務提携会社1955台の合計)となっている。

全国のタクシー事業者は、国土交通省によれば、2014年3月末時点で、法人タクシーが6456社、個人タクシーが3万8112事業者、合計すると4万4568事業者も存在する。また、運転者は法人タクシーでは31万8942人で、個人タクシーは1台につき1人とすれば3万8112人である。両者を合計すると35万7054人ということになる。

業界全体での営業収入は1兆6753億円と、タクシー市場自体は決して小さくはないものの、プレーヤーの数が多すぎるために、全体で見て効率的な運用がされているかは疑問である。輸送人員が大きく減少している一方で、タクシー全体の台数が減少していないということは、つまり「1台当たりの稼働率が大きく下がっている」ということである。

ソフトバンクは中国の配車アプリと協業

2018年2月に、中国の自動車配車サービスである滴滴出行(DiDi)とソフトバンクが、日本のタクシー事業者向けサービスにおいて協業すると発表した。同リリースの中では、以下のように協業の狙いがコメントされている。

「DiDiとソフトバンクは、DiDiが持つ深層学習をベースにした需要予測とスマート配車システムに、ソフトバンクの日本国内の事業基盤と知見を掛け合わせることで、日本のタクシー配車サービスをより最適化し、利用者の利便性向上を図ることができると考えています」

また、今回のサービスは「日本の全タクシー事業者が導入可能なオープンで中立的なプラットフォームの構築を目指します」とされている。

そうした中、2017年10月に第一交通産業がDiDiと連携するという報道や、2018年2月にウーバーテクノロジーズと提携を協議しているなどの報道があり、配車アプリと大手タクシー会社を中心に連携が進みそうである。


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