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やがてナンで食べるインドカレーは、日本人の日常食の一部に。今ではスーパーでも冷凍ナンを売っているし、バターチキンカレーなど人気のインドカレーのレトルト食品もある。

IT技術者たちには南インド出身の人が多かったこともあり、東京で南インド料理が増え始める。それまで日本で流行っていたナンで食べるインドカレーは、北インドの宮廷料理にルーツがある、ごちそうとしてのカレーだ。

カレー定着から80年で日本人の味覚にも変化

しかし、新しいトレンドになった南インド料理は、インドの人たちが日常で食べるミールスと呼ばれる定食で、サラサラのカレーや、酸っぱい果実のタマリンドやトマトを使用したスープのラッサム、漬物のアチャールなどを長粒米のご飯に合わせる。使うスパイスの種類が少なく比較的あっさりしている。ラッサムは日本の味噌汁を彷彿とさせる味わいで、ミールスは和定食を連想させる。

南インド料理が、大阪スパイスカレーと同じ時期に流行ったことは興味深い。どちらもご飯と合わせるなど、和食に通じる特徴がある。日本で新しい食が定着するのは、いつもご飯と合う料理になったときだ。とんかつしかり。定番のカレーライスしかり。和食というジャンルに入れると、「違う」と言う人は多いが、外国人から見たら「日本食」と映りそうな料理はいくつもある。

ルウのカレーが定着して約80年の間に、日本人の味覚も変わった。特にここ40年はグルメ化が進み、和食にはない味や香りにも日本人は慣れてきた。発売当初は「罰ゲームになるほどの激辛」と言われたカラムーチョも、今や「口から火を噴きそう」と思って食べる人はいないだろう。

味覚が大きく変わった日本人が、ご飯に合うもっと刺激的な味として求めたのが、大阪スパイスカレーだったのではないだろうか。日本人の好みに合わせて進化したカレーが、一時の流行にとどまらず定着する可能性は高い。

それにしても、新たなスタンダードになるかもしれないカレーは、なぜ世界中の料理が食べられるグルメタウン、東京ではなく、大阪で生まれたのだろうか。


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