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テニスのセリーナ・ウィリアムズ選手の試合から「男女平等」の問題を考えます(写真:ohishi / PIXTA)
ベストセラー『女性の品格』から12年。坂東眞理子・昭和女子大学理事長がいま考える、人生100年時代を納得して生きるために必要な「女性の美学」とは??大人の女性の3大場面、「職場」「家庭」「社会」それぞれの場で女性の直面する問題にどう対応するか、この連載ではつづっていただきます。

2018年9月8日、全米オープン女子シングルス決勝戦で大坂なおみ選手がセリーナ・ウィリアムズ選手を破って初優勝したことは、日本でも大きく報道されました。

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私はそのすぐあとにアメリカに行ったのですが、現地の友人たちが、この試合で敗れたセリーナ選手の態度、発言について熱心に論じていたので驚きました。

ご存じの方も多いとは思いますが、あらためて簡単に問題の概要を紹介しますと、大坂なおみとの試合中、主審はセリーナ選手に対して3回の警告を行いました。1つ目はコーチング(コーチが観客席から選手へ手でサインを送ることは禁止されている)について、2つ目はラケットを壊したことで、これらによりセリーナはポイントを失いました。

このあとセリーナ選手は主審に「あなたは私のポイントを盗んだ。泥棒だ」と言ったことが「暴言」と判断され、それが3つ目の警告となり、ゲームペナルティを受け、大坂に1ゲーム加算されました(上記の3つの行為に対して全米テニス協会は後にセリーナ選手に1万7000ドルの罰金を科すと発表)。表彰式では観客がブーイングをして騒然となり、セリーナ選手が却ってそれをなだめ、大坂が涙ぐむという事態になりました。

女性が公の場で怒りを爆発させるのは画期的?

これにはいくつもの論点があります。セリーナが言うように男性選手ならば暴言を吐こうがテニスラケットを壊そうが問題にされないのに、女性選手が同じことをするとペナルティが課されるのは男女差別ではないのかというのが、そのひとつです。

確かに今の社会では、男性と女性にダブルスタンダードが適用されているのは事実です。私のアメリカ人の親友は「女性も公の場で怒りを表すようになったのは画期的なことだ。今まで女性はどんなに悔しくても怒りを表してはいけないとつねに抑えられてきた」とセリーナ選手を支持しています。


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