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日本の書店の粗利益率は20?25%程度なので、1億円の粗利を稼ぐとしたら年商5億円必要だが、書籍の平均価格1200円程度、商品回転率が年間2回転以下という日本で50坪の書店がこの売上金額をあげることは考えられない。

アメリカの独立系書店「グリーンライト・ブックストア」の店内。粗利益が40?50%の書籍を販売することで経営が成り立っている(筆者撮影)

このように、アメリカの書店はもともと雑誌を扱っていなかったため、書籍だけで経営が成り立つ収益構造がある。このおかげで、アマゾンとの競争で大手書店が店舗を減らす中で、小規模な書店が新たに開業し、成長できるのである。

日本で、直ちにアメリカと同じ価格と利益の水準にすることは難しい。しかし、いくつか現実に粗利改善を果たしているケースはある。

ひとつはアマゾンジャパンだ。2017年に取次へのバックオーダー(取次非在庫品の発注)を取りやめるなど、同社は出版社との直接取引を拡大しているが、公表されている直接取引(e託販売)の条件は出版社の卸値率60%で、アマゾンの取り分は40%だ。

日本を代表する大手書店の紀伊國屋書店も、このところ一部出版社との間で「買い切り・直仕入れ」という新しい仕入れを拡大しているが、こちらも書店の取り分が40%というケースが報告されている。

配本制度の抜本的な見直しを

両社に共通しているのは「返品しない」ことだ。逆に言えば、返品をしなければ、直接取引で書店粗利40%を提供できる出版社はあるということでもある。

いま、日本の書籍返品率は30%台後半で推移している。返品率がこれほど高水準にあるのは、多くの出版物を書店の注文に基づかずに送る「配本制度」があるからだ。この仕組みを根本的に見直し、返品率を大幅に引き下げることができれば、日本でも人々を引きつける魅力を備えた書店なら、まだまだ開店・営業していくことが可能になる。

日本の書店が書籍の取引条件を改善し、これからの時代に対応した新業態に生まれ変われば、書店という業態自体はまだ十分に人々から求められる商売だといえるだろう。

星野 渉 文化通信社専務取締役

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ほしの わたる / Wataru Hoshino

1964年東京都生まれ。國學院大學文学部卒。1989年、文化通信社に入社。主に出版業界を取材。NPO法人本の学校理事長、日本出版学会副会長、東洋大学(「雑誌出版論」2008年?)と早稲田大学(「書店文化論」2017年?)で非常勤講師。著書に『出版産業の変貌を追う』(青弓社)、共著に『本屋がなくなったら、困るじゃないか』(西日本新聞社)など。

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