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中国の自動車産業を統計で読み解いてみました(写真:Wenjie Dong/istock)

現代はインターネットで検索すればたいていの情報があっという間に得られる時代だ。加えて、AI(人工知能)の開発が今後進められていくなかで、ただ単にたくさんのことを記憶していること自体に価値がなくなってきている時代でもある。

そのとき、人間が「何をどれだけ」知っておくかということと、そうしたデータを駆使していかに「クリティカルシンキング」ができるかが重要となる。イギリス『エコノミスト』誌の厳選による『The Economist 世界統計年鑑2019』は、同誌が築き上げてきた「信頼」を背景として、「何をどれだけ知っておくべきか」という問いに応えるものと言える。

情報は2つに分けて考える

一方で、データブックであるという特性上、そこからどのようなクリティカルシンキングを行うかは読者に委ねられている。私がかつてプレーヤーとして活動していた外交の世界では、情報が「インフォメーション」と「インテリジェンス」の2つに分けて考えられていた。それに照らし合わせるなら、同書は「インフォメーション」ではあるが「インテリジェンス」ではないと言える。

インテリジェンスは、政策につながる情報のこと。ある素材をどう分析するのか、そのデータがどういう意味を持つのかを付加価値としてつけ加え、本国に送ったり、政策を決める人たちに知らしめたりするものだ。そしてこのインテリジェンスこそが、外交の世界では何より重視される。

たとえば、日本政府がロシアの動きを予測したいとする。そのとき、仮にロシアの新聞を読めば、そこには「人事の異動がある」とか「軍隊の移動がある」といったデータを見つけることはできる。これが「インフォメーション」だ。

そこに、別ルートからつかんだ情報、たとえばロシアの国防大臣がこそっと語ったこと(これを「内話」という)を新聞の情報と組み合わせることで、それをもって「ロシアは実はウクライナの攻撃を考えている」などと言える。これがインテリジェンスである。

裏を返せば、「ロシアがウクライナの攻撃を考えている」というインテリジェンスを提供しようとするとき、その根拠が単なる内話だけでは信憑性に落ちるということ。国防大臣が意図的に嘘をついたのかもしれないし、単なる聞き間違いかもしれない。

ところがそこに、「人事異動があった」とか「軍隊が動いた」という確固たる情報が組み合わさることで、「ウクライナの攻撃は可能性が非常に高い」という結論を確度高く出すことができる。


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