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九州新幹線の開通後、久留米市の玄関口としての機能が増したJR久留米駅=2016年3月(筆者撮影)

久留米市は福岡市、北九州市に次ぐ福岡県第3の都市だ。2011年3月の九州新幹線全線開通とともに、JR久留米駅は新幹線駅となり、街の玄関口としての重要性を増した。

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駅周辺にマンションが建ち並び、景観や都市機能が変容。さらに、人を中心市街地に呼び込む営みが奏功し、若い世代の起業や開店が相次いだため、一時は3割近くに達していた空き店舗は大きく減少した。

背景には、新幹線で吸引力を増した福岡市と鹿児島市の間で、「都市間競争で疲弊しないまちづくり」を目指した独自戦略の誕生があった。青森学術文化振興財団の事業による九州縦断調査の途中で訪れた、久留米市の様子を紹介しよう。

博多、鹿児島とは「競争しない」

「九州新幹線の開業は、結果的には博多と鹿児島の“二人勝ち”だった。新幹線が福岡一極集中を強めた面もある。その中でどう戦うか。同質競争をしても意味がない。地域の宝やご当地グルメを磨き、福岡から日帰りでも久留米へ周遊してもらえるように策を練った。誤解を恐れずに言えば『プライドとコンセプトを持ったコバンザメ戦略』を採ったんです」

軽妙な、しかし聞き手を引き付ける語り口で、久留米商工会議所・中小企業相談所長の行徳和弘氏は振り返る。

久留米市は人口約30万人、筑後地方の中心都市だ。とんこつラーメンの原点である久留米ラーメン、筑後うどん、そしてB-1グランプリ全国大会に出展した久留米焼きとりといったご当地グルメを開花させてきた。

西鉄久留米駅の駅舎と岩田屋久留米店=2018年9月(筆者撮影)

西鉄とJR、東西に約2km離れた2つの「久留米駅」が街の核を成す。東側の西鉄久留米駅の隣には同市唯一の百貨店、岩田屋久留米店が立地し、街のメインの商店街、一番街もここから西へ延びる。JR久留米駅は筑後川に近く、ブリヂストン、ムーンスター、アサヒシューズの工場、久留米市役所が近接している。


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