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一方、大学入試改革の議論が早くも中学入試に影響を与えたのは次のようなメカニズムです。

多くの私立中高一貫校では、大学入試改革後の大学入試が受験生に求めるであろう「新しい学力観」に基づいて、教育内容の見直しを行いました。すると、教科ごとの授業では能力を発揮する場面が少なかった生徒が意外な能力を発揮する場面が増えることがわかったのです。

だとすれば、同じことが入試でもできないだろうか。いわゆる偏差値的な学力の高い受験生を上から順に入学させるのではなく、多様なタイプの知性をもっている生徒たちを意図的に集めようということです。

その発想の延長線上に、「思考力型入試」だけでなく、「英語入試」や「得意科目選択型入試」も位置づけられます。

ここでいう「英語入試」とは帰国生を対象にした入試ではありません。日本に住んでいながら、習い事として学んできた英語の能力を評価しようというものです。2018年の中学入試では、112校が英語入試を実施しました。

「得意科目選択型入試」とは、算数1教科だけ、もしくは算数と理科の2科目だけというように、得意教科だけを評価対象にする入試のことです。

12歳時点の子どもに、好き嫌いのバラつきがあるのは当然。「1教科でも得意な科目があれば、精神の発達とともにほかの分野も伸びる潜在能力がある」と捉えられるように、学校側の評価基準が変わってきているのです。

ペーパーテストの枠組みを超えた「アクティブ・ラーニング型入試」もあります。解答をレゴブロックで表現させる入試、図書館で書籍やタブレット端末を用いて自由に調べながら解答していい入試、グループディスカッションをさせる入試、英語でゲームをしたり対話をしたりする入試……。

慶應湘南藤沢やお茶の水女子大附属も新型入試開始

新型入試で入ってきた生徒たちは、あとから伸びるだけでなく、自己肯定感も高いと、多くの教員が口をそろえます。偏差値で輪切りにされたのではなく、自分の得意な部分、自分の好きな部分を評価してもらえたという実感があるからです。

そしてまた、自分とは違う多様な入試で入学してきた同級生にもそれぞれに得意なものがあるはずだという尊敬の念も生まれやすい。

はじめは生徒集めに苦慮する中堅校が実施するイメージがありましたが、いまとなっては人気校も実施するようになっています。


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