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LSEラストランツアーに話を戻す。

最後の上り運転を担当した運転士の下村謙治さん。乗客から花束が贈られた(筆者撮影)

引込線にいたLSEは再び動き出し、終着駅の秦野に到着。いよいよ本当にお別れだ。

乗客が全員降りた後、運転士さんは最後に窓を開けて手を振り、警笛を鳴らして列車をゆっくりと車両基地へ向けて発車させた。ホームにいた乗客たちが口々に声をかけた。

「38年間、ありがとう?!」

「おつかれさまでした!」

「LSE、バンザーイ!」

その去っていく姿に自然と拍手が沸き起こる。とても熱い時間がついに終わった。

開成駅にはNSEの姿

秦野駅に来たのは初めてだった。ふと、ここから開成駅は近いと気づき、まだ余韻に浸っていたかった私は、同じく行ったことのない開成駅を目指した。

小田急線開成駅東口すぐにいるロマンスカーNSE(3100形)の「ロンちゃん」(筆者撮影)

各駅停車で3駅、ホームからも目の前に見えるが、東口に降り立つと、そこには先日勝島さんに見せていただいた写真と同じ、ロマンスカーNSE(3100形)の先頭車両が鎮座していた。2002年に付けられた愛称は「ロンちゃん」。小田急電鉄が譲渡し、月に2回ほど車内を公開しているらしい。ロンちゃんの周りでは、子どもたちが鬼ごっこをしていた。にぎやかな声に囲まれて、第2の人生を幸せに過ごしているようだった。

LSEは2021年、海老名駅の隣にオープン予定のロマンスカーミュージアムでまた会える。その時は歴代のロマンスカーたちが一堂に会し、まるで同窓会のようであるに違いない。そして集う人々も、ロマンスカーを通じて旧交を温めることになるのかもしれない。

そこにはきっと勝島さんの姿もあるだろう。ラストランツアーには、かつてLSE車内でプロポーズして結婚し、久しぶりに乗車しにきたご夫婦もいた。人と人、そして思い出を乗せて走るロマンスカーは、この先もずっと愛される存在のままだ。


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