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産業革新投資機構と全面対決中の経済産業省。官民ファンドの存在意義が問われている(写真:西村尚己/アフロ)

官民ファンドの1つ、「産業革新投資機構」(JIC)が大揺れに揺れている。トップの高額報酬に絡み、所管する経済産業省との間で内紛が表面化。両者の確執は解消しそうになく、産業革新投資機構では田中正明社長をはじめ、民間出身の取締役全員が辞任する見込みだ。

産業革新投資機構は、前身である産業革新機構を2018年9月に改組して発足した、国内最大級の投資会社だ。前身の産業革新機構は2009年7月、産業や組織の壁を越えて、オープンイノベーションにより次世代の国富を担う産業を育成・創出することを目的に、2024年度末までの期限で設立された。設置期限を設けるのは政府の出資が民業圧迫にならないようにするためである。民間ファンドだけではできないリスクテイク機能を果たすべく、民間とともに政府からも出資し、中長期のリスクマネー、すなわちエクイティー投資の出し手となることが期待された。

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そもそも官民ファンドとは、企業に対する出資、貸し付け、債務保証、債権の買い取りなどを行うことを念頭に、国から出資などを受け、民間からの出資も交えて設立した、株式会社等の形態をとるファンドである。政府の成長戦略の一環として、民業補完を原則とし、民間で取ることが難しいリスクを取ることにより民間投資を活発化させ、民間主導の経済成長を実現することを目的として設立された。特に第2次安倍晋三内閣以降、11もの官民ファンド(13法人)が立ち上がった。

ジャパンディスプレイやルネサスを手がけた過去

2009年に設立された産業革新機構は、2016年度末までに114件の支援を手がけ、1兆2483億円の利益を上げた。ただ、その利益は、半導体大手のルネサスエレクトロニクスの株式の含み益が多くを占めるとみられる。他方、当初のもくろみだったベンチャー投資では、多くの案件で収益の回収に苦しんでおり、液晶大手のジャパンディスプレイなど経営不振企業の救済色の強い案件で収益を稼いでいるのが目立った。経営再建中のシャープのように、外資による日本企業の買収を阻止するための対抗馬として担がれることもあった。

そうした中、経産省は省内で2017年10月から検討を進め、同年12月に産業革新機構を改組する方向を打ち出した。産業競争力強化法を改正する形で、第4次産業革命関連などの重点政策分野に投資を絞り、新たな投資基準を策定して透明性を高めて、管理機能と投資機能を分離した新機構を新設することにしたのだ。


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