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言うまでもなく社会全体に浸透している無線通信網だが、それらが失われたとき、社会がどのようになってしまうのか。完全に通信手段がなくなったとき、どのような影響があるかは、これまで想像力に頼るほかなかった。

しかし、今回のトラブルで多くの人が“新型都市災害”とも言える通信網のダウンを経験し、そのリスクがあらためて認知されたという意味で、何度も振り返られる歴史的な事例になるだろう。

計り知れない「トラブルの影響範囲」

単に連絡が取れない、メールが送受信できないといった通信トラブルは、たとえばスマートフォンを持って出るのを忘れただけでも体験することは可能だ。以前ならば目的地までの地図や電話番号をメモ、あるいは印刷して出かけていたものだが、スマートフォンの時代になってからは、多くの人が地図ソフトなどのネットワークサービスに依存した生活スタイルを送っている。

昨日のトラブルでビジネス、プライベートに限らず、情報や各種サービスへの接点を失い、気息奄々の気分を味わった読者も多かっただろう。2013年、KDDIが同様のトラブルを引き起こした際には地域性があったが、今回は全域にわたるダウンだったからだ。

しかし、その影響範囲は個人の通信手段が失われるという単純なものではない。

昨日は電子発券のコンサートチケットをはじめとした、ネットワークサーバー上で生成される電子チケットのコードを取得できなくなるといったトラブルが発生し、SNSなどを通じて悲鳴が上がっていたが、無線通信網はいまや社会全体に組み込まれている。

宅配業者が用いている業務用端末が突然、通信できない状態になれば荷物の集配に影響を及ぼすのは当然だろう。しかし、リスクは目に見える端末の形にとどまらない。

たとえばFeliCaへのチャージが行えなかったりLINEやPayPayなどを用いた決済ができないといった、電子マネー社会における決済システム停止といったリスクも“頭ではわかっている”という読者は多いはずだが、実際に多くの人が体験したことでリスクに対する意識は変化したに違いない。

LTEあるいは2020年以降に開始する5Gでは、高速通信を必要としない端末向けに低電力消費・低コストの通信サービスが提供可能となるため、多様なデバイスが利用者が意識しないまま接続される。

社会全体がネットワーク化され、その歩みは加速することこそあれ、ゆるむことはない。データ通信の遅延が極めて小さい5Gでは、無人車両やドローンによる空飛ぶタクシー、宅配などが普及していくと考えられる。すなわち今後、無線通信網のトラブルは移動体へと広がり、交通網へと広がる。


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