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イールドカーブの逆転も、投資家の心理を悪化させた。イールドカーブとは、期間の短い金利(翌日物)から長い金利(アメリカ国債の場合、最長は30年)までを横軸に並べ、金利水準を縦軸にとって、描くグラフ(利回りの曲線)を指す。通常は期間が長いほど金利水準が高くなり、そうした右肩上がりの曲線を、「順イールドカーブ」と呼ぶ。

期間が長い金利が高くなる理由は2つある。1つは、期間が長いほど先行きが不透明で、借り手の破たんリスク(貸し倒れリスク)が高まる。これは、銀行などによる融資でも、社債などに対する投資でも、同様だ。したがって、資金の貸し手としては、リスクが高い分だけ金利を高くしてもらわなければ引き合わない。このため資金需給面から、長期の金利の方が高くなる。

もう1つは、通常は先行きの景気拡大が予想されている、ということだ。足元の金利が低くても、景気拡大が持続すれば、将来の金利水準は高まりうる。10年金利は、翌日物金利の10年先までの利回りの年間平均値とも考えることができる。先行き短期金利が上がっていくのであれば、期間が長い金利の方が高くなる。

今回の「逆イールドカーブ警戒」は行き過ぎの感

ところが、長期金利の方が短期より低くなる、つまりイールドカーブが右肩下がりの曲線になることも、実際には起きる(これが「逆イールドカーブ」と呼ばれる現象だ)。その背景理由を考えると、前述の第1の理由はいつでも変わりはない。つまり、第2の理由、先行きの景気拡大が見込まれている、といった事態が逆転し、投資家が先行きの景気により将来の金利が低下していく、と予想することが、イールドカーブの逆転を引き起こすと推察される。

この「イールドカーブが順か逆か」という点を、5年国債利回りと2年国債利回りの差で見ている人が多いようだ。この5年債と2年債の利回りが、12月3日(月)時点で11年半ぶりに逆転し2年債の方が高くなったため、債券の投資家がアメリカの経済の先行きについて、厳しく見ており、そのため「いずれアメリカ経済は後退期入りするのではないか」、という懸念を呼んだ、というわけだ。

とは言っても、たとえば5年債利回りと2年債利回りの差が、プラス0.00001%ならアメリカの経済は大いに拡大基調だが、マイナス0.00001%なら奈落の底に落ちる、といったものではない。ある程度は誤差の範囲であり、大騒ぎするのもどうかと思う。

確かに、過去にイールドカーブが逆転すると、たいがいその後に景気後退期を実際に迎えている。つまり、逆イールドの景気悪化の「的中能力」は高いと言える。しかし、イールドカーブが逆転してから景気後退に入るまでは(どの期間の金利でみるかによるが、どの場合でも)概ね1年ほどの時差がある。その点では、今すぐアメリカ経済がリセッション(2四半期連続でマイナス成長した場合を言う)に入るかのような騒ぎも、行き過ぎであるという感がある。


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