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顧客に対してはYahoo!ショッピングを利用した場合「全員まいにち! ポイント5倍」と銘打ってポイントの大盤振る舞いを始めました。これは単に5倍どころではなく「Yahoo!プレミアム会員は5倍」「5のつく日は5倍」「Yahoo! JAPANカードで決済すれば3倍」などのキャンペーンを同時にうまく組み合わせていくとポイント20倍に簡単に到達できるということで大きな反響を得ることになりました。

一方で楽天市場に出店する企業に対しては「Yahoo!ショッピングなら出店しても出店料がかからない」という出店ゼロ円のキャンペーンを始めました。楽天市場のビジネスモデルでは、これはオンラインのショッピングモールとしては至極当たり前のことですが、出店することでいくら、売り上げに対しても何%という形で、楽天市場上で商売をしている出店企業は楽天に対してお金を支払っています。

しかし、「それをヤフーは無料にする」というオファーを楽天の出店企業に出したのです。それならば小売店としてやるべきことは簡単で、楽天と同じお店をYahoo!ショッピングにも出店すればいい。普通だったら小売店は2カ所にお店を開けば2店分のコストがかかりますが、ヤフーに出店する2つ目のお店は出店料がかからない。しかし2カ所に出店すれば売り上げは増えるのです。

そしてユーザーから見れば、楽天市場と同じお店がヤフーショッピングにも出店していて、しかもポイントがざくざく貯まる。この2つの力学が働いた結果、ヤフーはかなりの消費者を楽天から奪い取ることに成功しました。この時期、ヤフーのショッピング部門の売り上げは大幅に伸びるとともに、楽天はショッピング部門の売り上げが停滞し、株価に明らかなマイナス影響が表れるまでの事態になりました。

この大盤振る舞いキャンペーンは投資資金にも限りがあるということから翌年にはいったん終了し、その後、「ソフトバンクユーザーは10倍」など形を変えながら、全体的には徐々にポイント還元率は下がっていきました。しかしここで重要なことは、ソフトバンク・ヤフー連合は「消費者に20%を還元し、加盟店にゼロ%を提示すれば、市場は動く」ことを学んだということです。

ソフトバンクが見いだしたチャンス

ソフトバンクは中国のアリババへの投資で大きな利益を得ましたが、一方で足元の日本市場ではキャッシュレス化が先進国の中でも飛び抜けて遅れているという状況にあります。特に本命と目されるスマホ決済がまったくといっていいほど普及していないという現状を見るに、ソフトバンクが「今、日本のスマホ決済市場にはとてつもないチャンスがある」と考えたとしても不思議はありません。かつてアフリカに出かけた商社マンが「ここでは誰も靴を履いていない。無限の市場がある」と考えたのとまったく同じです。

そして市場が莫大ならば中国のアリペイの日本展開を支援するよりも自前でやったほうが利益は大きい。そこでソフトバンクはインド最大の決済サービス事業者であるPaytmと連携したPayPayサービスを自前で開始することにしたのです。


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