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さらに従来型が油圧パワーステアリングを使っていたのに対し、新型はデュアルピニオンの電動パワーステアリングとなり、据え切り時の操舵力を低減しながらもステアリング剛性を大幅に向上。それに加えてリアのダンパーをサイズアップしたことで、背の高いミニバンとは思えないリニアな操舵感と応答性を持った車両に仕上がっていた。

また、電子制御4WDには新たにヨーレイトフィードバック制御を新たに追加し、アンダーステアを抑制しハンドル操作に忠実な車両挙動を実現している。といっても実際に乗っている限り、その存在を意識することはないと言っても過言ではないほど自然な制御であり、まるで自分の運転が上手くなったかのように錯覚するほど軽快な走りを楽しむことができるだろう。

見た目では判別できないが、従来型と乗り比べて格段に向上したと感じられたのが静粛性だ。もともと音の大きなディーゼルエンジンとロードノイズの大きなマッド&スノータイヤを履くデリカD:5は静粛性の面では不利なモデルであった。

対して、今回のマイチェンでフロントガラスを遮音ガラスに変更し、フェンダー、ダッシュパネル、フロアパネル、カウルサイド、ヘッドライニング、ドアトリム、インパネ、フロアサイレンサーに至るまで遮音部品と吸音部品を見直した結果、大きく静粛性が向上している。さらにディーラーオプションのフロアマットにまで吸音機能付のものを用意する徹底ぶりである。

従来型は運転席に座るとエンジンの存在を強く感じるほどだったが、新型ははるか遠くでエンジンが回っているような感覚と言えば分かりやすいだろうか。もちろん、走行中の騒音の侵入もかなり低減されており、これなら少なくとも「うるさい」と感じるユーザーはいないのではないだろうか。

内装の質感向上と安全装備の充実も

新型「デリカD:5」の車内。改良に伴い、インテリアの質もグッと上がった(撮影:クリハラジュン)

デリカD:5自体は2007年にデビューしたということもあって、どうしても古さを感じてしまうインテリアだったが、新型はインパネの造形を含め一新された。10.1型の超大型ナビゲーションが装着されるスペースに目が行きがちだが、水平基調となったインパネやメーター、ダイヤモンドパターンのシート表皮などは同社のプレミアムSUVであるアウトランダーPHEVと同様のプレミアム感の高いものに生まれ変わっている。

そして今や必須装備となった先進安全装備。従来型には一切用意されていなかったのだが、新型には衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報システム、全車速対応のレーダークルーズコントロール、オートマチックハイビームが全グレードに標準装備となったことも購入を検討しているユーザーにはうれしい点だろう。

見た目のクセは強いが、乗り味はクセのない洗練されたものになった。

エクステリアは通常のモデルとエアロパーツをまとった「URBAN GEAR」の2種類が用意される新型デリカD:5。これは見た目以外の機能に関しては違いがないため純粋に好みで選んでいいが、エアロパーツによってアプローチアングルやディパーチャーアングルが減少しているため、アクティブに使いたいユーザーは注意が必要だ。

しかし、繰り返しになるが、強烈なエクステリアに対して中身の進化は半端なく、もはやフルモデルチェンジといっても信じてしまうほどワンランク上の車両に仕上がっていた点は正直驚いてしまった。従来のデリカシリーズはどちらかというとややマニアックなユーザーが中心となって支えているイメージがある車種だったが、新型は一般的なミニバンを検討しているユーザーにとっても非常に魅力的な車種に生まれ変わったと言っていいだろう。

もちろん、SUVに匹敵する走破性の高さや、トルクフルなディーゼルエンジンを搭載するミニバンという唯一無二の個性はまったく薄れていない。できることなら多くのユーザーに触れてもらいたい1台である。

小鮒 康一 フリー(ライ)ター

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こぶな こういち / Kouichi Kobuna

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とするが、実は現行車へのチェックも欠かさない。また、中古車販売店に勤務していた経験も活かし、中古車系の媒体でも活動中。できればどこへでもクルマで行きたいタイプで、電車移動は苦手な部類。通称「フナタン」。

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