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観光分野におけるドローンの可能性とはどのようなものなのか(写真:シアン)

無人航空機のドローンといえば建物の点検や測量などを目的とする建設業界や、物流の改善などで注目されることが多いが、観光ツアーに活用するサービスを開始した会社がある。ドローンに搭載したカメラからの“鳥目線”の映像をVRゴーグルやモニターで地上にいるツアー客にリアルタイムで見せる「空力車」というサービスを提供する株式会社シアンだ。

本稿では、シアンの岩井隆浩代表(39歳)に話を聞き、観光分野におけるドローンの可能性を探ってみた。

ひょんなことからドローンと出会った

岩井さんは、海上自衛隊で14年間ヘリの整備に携わった経験を持つ。「敷かれたレールに自分を合わせることに苦痛を感じるようになり、退官しました」(岩井さん)というが、このヘリ整備士時代に身につけた航空法や航空力学の知識が、今のドローン事業を進めるうえで強みになっている。

海自を退官した後は、外資系航空会社勤務やボルダリングジムの経営、東京都の創業支援施設のスタッフなどを経験するが、ひょんなことからドローンと出会うことになる。建設会社の創業者で年の離れた友人が、あるとき「ドローンの資格を取りに行く」という話を切り出した。理由を尋ねると、「建設業界では今後、ドローンが必要になるが、社員にやらせるにしても、経営者が何も知らないのでは話にならない」というのだ。

シアンの岩井隆浩代表(筆者撮影)

そこで岩井さんは、忙しい友人に代わり自分がドローン業界をリサーチすると申し出た。もし、事業として成り立つ可能性があるならば会社を設立し、ドローン事業を請け負う約束もした。

2017年、岩井さんはほかの業務を行いながら、およそ10カ月かけてドローン業界をリサーチした。その結果、市場が未成熟ということもあり、ドローン専業会社で安定して利益を出せている会社は少ないことがわかった。

また、建設業界は法規制が厳しく既得権益が大きな業界だ。しかも、建設業界でドローンを活用しようという先行プレイヤーはすでに多くおり、スタートアップである岩井さんたちが追いつくのは難しいという結論になった。

とはいえ、ドローンの将来性は大きい。そこで、将来的に大きな市場規模が見込まれ、サービス業の経験も生かせる観光の分野に参入することにした。観光分野でのドローンの活用は、PR動画の空撮を行っている会社はあるものの、観光ツアーそのものに生かそうというドローン専業会社は、岩井さんの知る限り皆無だった。


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