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日系メーカー各社が中国NEV規制を乗り越える方策としては、おおむね以下の3つを挙げることができる。

1つ目の方策は、中国合弁パートナーの既存のEVプラットフォームを活用し、NEVを早期に生産することだ。この方策は、NEVクレジットを稼ぐだけでなくNEV生産ライセンスを獲得することにもつながる。中国政府はEV生産ライセンスの管理を厳格化しており、ライセンス取得後1年以上経過しても生産実績のない自動車メーカー27社を昨年11月公表した。この27社には政府の再審査をパスできなければライセンスを剥奪されるという罰則もついている。

現在の日本車メーカーの動きをみると、トヨタが昨年8月に投入したEV「ix4」は合弁パートナー広州汽車のプラットフォーム(車台)を採用している。ホンダが昨年11月開催の広州モーターショーで発表した中国専用EV「理念VE-1」は、ホンダと広州汽車の中国合弁、広汽ホンダの自主ブランドだ。しかし日系メーカーが現地発のNEV車種を早期に市場投入できたとしても、合弁相手のNEVやその他地場メーカーのNEVと差別化するのは簡単ではない。

自社ブランドNEVを市場投入する日産、トヨタ

2つ目の方策は、自社ブランドのNEVを市場投入することだ。日産が昨年9月発売した「シルフィ・ゼロエミッション」は、日産ブランドとして初めての中国生産のEVである。トヨタが今年3月投入を予定する「カローラE+」は、トヨタが中国生産する初のプラグインハイブリッド車(PHV)となる。ガソリン車仕様の「シルフィ」と「カローラ」は、昨年の中国セダン市場で販売台数トップ3にランクインした人気車種だ。ブランド力のある2車種のNEVモデルを投入することで、一層の販売拡大につながると思われる。

また、日系メーカー各社はガソリン車種のNEVモデルに加え、EV専用プラットフォームの開発にも取り込んでいる。しかし一方で、日系メーカーがEVの基幹部品であるリチウムイオン電池の調達を検討したとき、中国現地で電池を生産するパナソニック1社だけでは日本車の需要を賄いきれず、地場電池メーカーからの調達は避けて通れない。

実際、「シルフィ」EVや「ix4」には中国電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)の電池が搭載されており、ホンダは今月5日に中国でCATLの電池を採用すると発表した。今後中国における低コスト・高品質の電池の奪い合いが起きることは必至であり、電池の安定調達は日系メーカーの懸案となるだろう。

3つ目の方策は、EV合弁企業の新規設立や地場EVメーカーに出資することで「NEVクレジット」を稼ぐことだ。リチウムイオン電池や制御システムなどの基幹部品を含むNEVの開発には、最低でも2年は必要とされている中、単独でNEVを開発しNEV規制をクリアするのは困難であるため、地場メーカーとの資本提携を選択する外資系企業は少なくない。


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