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「今」を肯定的に受け入れることで、過去のつらい記憶からも解放されます(写真:saki/PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャ?」の大野萌子です。

カウンセリングでは、相談者が自分自身と向き合う作業をサポートすることが大きな目的の1つです。その折に、大切にすることは「今ここ」での感覚や、思考に焦点を当て続けることです。「今」という感覚から、どうしても離れてしまいがちになるので、そこに注力できるように関わるのがカウンセラーの役目でもあります。

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なぜかというと、とかく悩みごとを抱えていたり、心を病んでしまうと、原因探しのごとく過去を振り返ることをしがちになるからです。

しかし、過去に起こった事実は変えられず、いくら過去を探索したところで、つらい思いや悲しい気持ちがよみがえるだけで、解決には結びつかないことが多いのです。

また、過去に思いをはせることによって、その時の感情がよみがえるような気持ちになりますが、実際には違います。それは過去を振り返ったときの「今」の感情でしかありません。実は、過去に感じたものとはまったくの別物なのです。さらに、その記憶はつねに塗り替えられていて、非常に不安定で曖昧です。

記憶は曖昧になることが多い

ある調査の例を挙げます。

学生に1週間に起こった自らの出来事を毎週15ずつ、4カ月間記録させ、その後、実際に学生に自分が記録したものと、本人とは関係のない記録を見せ、どれが自分に起こった出来事なのかを判定させるというものです。

結果は、90%の学生が自分の記録内容を認識できたと同時に、自分と関係ない“模造記録”に関しても、50%の学生が「自分の出来事」と認識したというものです。

これは一例ですが、日常の多くの出来事や感情の変化が、過去の記憶をゆがめることは多くあります。記憶や意識が保たれるのは、わざわざ故意にそれらを植え付け直して作られるものであり、「記憶はうそをつく」といった脳科学的な学説もあります。


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