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福岡県福岡市東区にあるアスクルの福岡物流センター(筆者撮影)

昨年、中央省庁で障害者雇用の水増し不正が発覚し、大きな批判を浴びた。日本では障害者雇用促進法により、民間企業は2.2%、官公庁は2.5%以上、障害者を雇用する義務がある。しかしながら、2017年の調査で法定雇用率を達成している企業は半数ほど、2018年調査で国の機関では1.22%と低迷しており、現実は厳しい。

そんな中、障害者雇用率が20%という職場が福岡市にある。いわゆる福祉事業所ではなく、オフィス通販のアスクルの福岡物流センター。アスクルの100%出資会社・ASKUL LOGIST(アスクルロジスト)が運営している。驚くべき取り組みの背景に迫った。

物流センターのスタッフ195人のうち39人

福岡市東区の博多湾に作られた人工島・福岡アイランドシティ。大きな物流施設が並ぶエリアに、福岡物流センターはある。巨大なセンターに勤めるスタッフ195人のうち39人が障害者だ。

採用を担当するのは、副センター長の坂井博基さん。2009年に中途入社するまで、採用の経験はなかった。同センターで障害がある人の雇用を始めたのは2011年のことだ。

坂井さんは佐賀県出身。派遣会社を経て、2009年ASKUL LOGISTに入社(筆者撮影)

「法定雇用率を満たすために3人雇い入れる」と決めてすぐ、たまたま難聴の男性が入社した。補聴器をつけてほかの人と同じ仕事に就いたが、わずか3カ月で辞めてしまった。理由は「他県に引っ越すから」。

ところが1カ月後、思わぬ出来事が。坂井さんは自転車でセンターの前を通る彼の姿を見かけたのだ。

「退職の理由は違ったのだとハッとしました。3人雇えばいいと簡単に考えていたけれど、ほかの人と同じ雇い方ではいけない、考え方を改めなければ、と」

坂井さんは社内で「3人と言わず30人雇えるような仕組みを作ります」と宣言し、協力を求めた。

とはいえ、坂井さん自身、障害についてまったく知識がない。まずは高等特別支援学校に行ってみることに。高等特別支援学校は、知的障害のある生徒に対して、一般企業への就労に向けた教育に重点を置いている。坂井さんは社内のリーダーに声をかけて総勢10人で、学内実習の様子を見学した。

すると、1人の生徒が対応してくれた。「彼はあいさつがすごくよくできて、自分がやっている実習についてわかりやすく説明してくれて、見るからに好青年。純粋に、こんな人と働けたらいいなと思いました」


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