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もう我慢の限界?!フランスのマクロン大統領はイタリア大使の召還を発表した(写真:ロイター)

欧州に関する報道はもっぱらブレグジットの話題で埋め尽くされているため、あまり注目されていないが、現在、フランスとイタリアの外交関係の悪化が見過ごせない事態に差し掛かっている。

先週7日にフランス外務省はイタリアのたび重なる内政干渉を理由に駐イタリア大使の召還を発表、「フランスは数カ月前から、再三の糾弾や根拠のない批判、荒唐無稽な主張にさらされてきた」と強い語気の声明を出すに至った。

通常、大使召還は国交断絶の一歩手前と解釈されることが多い。EU(欧州連合)にとって、加盟国同士、しかもコア国であるイタリアとフランスの間でそのような事態が起きることは、危機的かつ経験のない出来事と言える。今回の声明文でも「大戦以降、前例のない事態」と述べられており、早晩収束するのかどうか予断を許さない。

マクロン大統領を「ひどい大統領」呼ばわり

声明自体は具体的な出来事に言及していないが、イタリアのポピュリズム政党で極左的な主張を行っている「五つ星運動」の党首であるディマイオ副首相(兼経済発展相)らがマクロン仏政権に対する抗議デモ「黄色いベスト運動」の幹部と会合を持ち、支持を表明したことなどが原因と目される。

もとより移民問題をめぐって両国の関係は芳しいものではなかったが、最近では副首相自らが抗議デモ運動のリーダーや欧州議会選挙出馬予定の活動家らと面会してはツイッターなどで支持を表明、果ては集合写真なども公開するなどフランス政府を挑発するような言動が目立っていた。

ついにフランスとしても看過できなくなったというところだろう。声明文で「意見の相違はさることながら、選挙目的に関係を悪用するのは別の話」と指摘している。つまり、一連のディマイオ副首相の立ち回りは5月の欧州議会選挙で自身が属するポピュリスト会派の支持を得るためのパフォーマンスとの見方がもっぱらである。

ちなみに、もう1人の副首相で極右政党「同盟」の党首であるサルヴィーニ副首相も1月、「フランス国民がひどい大統領から逃れられるよう期待する」などと踏み込んだ批判を展開している。サルヴィーニ副首相はフランス極右政党「国民連合」のルペン党首と共闘する立場であるため、マクロン政権に強く当たるのは当然の戦略でもあるが、同じEU加盟国(しかも第2の大国)に対してこれほどまでに外交上のリスクを取ることが適切なのだろうかと思わざるをえない。


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