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ただ、競合メーカーが同様の製品を続々と発売したため、現在の冷凍ギョーザ市場では「水なし・油なし」は“当たり前”になってしまった。いまや「フタなし」で焼けることを訴求する他社製品もある。

味の素はテコ入れを図るため、2018年8月に冷凍ギョーザ製品をリニューアル。皮を薄くし、使用している野菜をすべて国産に切り替えた。加えて、「しょうがギョーザ」や大袋入りの大容量製品も投入した。

だが、テコ入れの効果は限定的だった。新製品が上乗せされることで前年の売上高を超えることはできたが、ラインナップを増やしたことで「新規顧客が増えたのではなく、自社製品の中で消費者を奪い合う“カニバリ”が起きてしまった」と、IR担当者は説明する。

空揚げやチャーハンも苦戦

同様に、空揚げやチャーハンも苦しい。冷凍空揚げ市場では、2017年3月にニチレイが投入した「特から」がヒット。「市場でのシェアも一気に奪った」(ニチレイのIR担当者)。この結果、味の素とは対照的に、ニチレイの2018年度家庭用冷凍食品は前期比5%増での着地となる見通しだ。

チャーハンなどの米飯類も、2015年に発売した「ザ チャーハン」がヒットして以降伸び悩む。競合他社は「ピラフ」や「チキンライス」、「焼きおにぎり」など製品群を充実させている。一方、味の素は主力の「ザ チャーハン」に注力するために一部製品を終売にした。この施策が裏目に出て、「売り場での存在感が弱くなってしまった」とIR担当者は語る。

冷凍食品の見通し後退に加え、海外事業の不振によって300億円近い減損損失を計上したことにより、味の素は2018年度の全体業績見通しも大きく減額。売上高は従来計画に対して84億円引き下げ1兆1468億円(前期比2.9%増)に、純利益は334億円引き下げ216億円(同64.1%減)になるとした。水準は高いとはいえ、大幅減益である。

来2019年度以降に業績を再拡大させるには、冷凍食品の立て直しが求められる。来年度が、今後の動向を占う正念場になりそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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