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いくつか具体的なルートを出してみよう。ベッドタウンがある街は日本人が観光で行くエリアからは結構離れているので馴染みのない地名かもしれない。「長めの距離を走る路線バス」にはさまざまなルートがあるが、競合する鉄道があるルートを主に拾ってみた。

ベッドタウンの新界地区にある元朗から、中心市街地である香港島の銅鑼湾まで行く場合、鉄道では郊外電車のMTR西鉄線と地下鉄の東涌線、港島線を乗り継いで約50分かかる(乗り継ぎによって時間は変わる)。運賃はICカードの場合27.5香港ドル(約390円)だ。

この区間を、バス(KMB968系統)は約65分で直行する。運賃は23.4香港ドルと鉄道より安く、平日の朝6時過ぎから11時台までは3?8分間隔と高頻度の運行だ。

鉄道では4路線を乗り継いで約60分かかる新界地区の上水から香港島の湾仔までも、バスは乗り換えなしで65分ほどだ。運賃は鉄道がICカード利用の場合20.8香港ドルなのに対してバスは24.3香港ドルだが、こちらも朝は8?9分おきに運行している。

ベッドタウンと中心市街地を結ぶこの手のバスの停留所の配置は非常にユニークだ。住宅地では、団地1棟ごとに小まめに1?2分間隔で止まるのに対し、ひとたび近くのインターチェンジから高速道路に入ると、到着地エリアのオフィス街までほぼ無停車。中心市街地に入ると再び細かく停車する。

さながら「△△地区に通勤する〇〇団地住民の巨大な乗合タクシー」といえるくらい、乗降地点がピンポイントで定められている。

遅れや積み残しはあまりない

香港のバスは基本的に2階建てだが、上層(2階)は立ち席不可。下層(1階)にも立つ場所はほとんどないので、たいていの人は座って行けるというメリットは大きい。

2階の空席案内表示(右側の数字)をテスト中の車内。Wi-Fi装備はすでに一般的だ(筆者撮影)

「長めの距離を走る路線バス」の運転間隔は、ラッシュ時は需要の多い路線で6分、少なめのところで20分だ。15分を超えると「ずいぶん待たされる」感じとなるが、需要予測に基づいてダイヤ調整されており「積み残し客」がバス停にたまって大変、といったことはあまりないようだ。

「混んでいても電車のほうが絶対に速い」という状況ではバスに勝ち目はないが、渋滞による遅れの問題が少なく、かつ必ず座れるとなれば、電車でなくバスに利用者が流れても不思議はない。


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