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――米グーグル、アマゾンなども「ソフト+ハード」、つまりIoT製品を積極的に出しています。IT企業が敢えてハードを手がける意味は何でしょう。スマートフォンのアプリではいけないのですか?

スマホはあまりにも汎用機化しすぎた。何でもスマホでできるというのは、汎用機としてはすばらしいことだが、一方で特定の機能に用途を絞ったときに、ちゃんとフルに性能を発揮できるかというと疑問がある。

たとえば、翻訳したいならばスマホ上でグーグル翻訳を使えばいいという考え方もあるだろう。ただ、汎用機ゆえに、まずパスワードを解除して、アプリを見つけて、翻訳したい言語を設定して、といくつかの過程を踏む必要がある。ポケトークのようにボタンを押したらワンステップで翻訳とまではいかない。さらに、雑踏などうるさい場所で使われることも多いため、スマホのマイクやスピーカーの性能では不十分だ。

これは、いまだに電卓を使う人がいたり、アマゾンが読書専用端末として「キンドルペーパーホワイト」を発売しているのも同じ。今後は、スマホにいったん集約された機能の中から、専用デバイスとして出ていくものが増えていくと思う。

2代目はアメリカでも販売を開始

――2018年9月に発売された2代目のポケトークは、初代より翻訳精度が改善されましたが、専門用語や慣用的な言い回しが苦手だったり、性能には課題が残ります。

ソフトウェアのアップデートで、今後も翻訳精度が上がり続けることは間違いない。当社のアプローチ方法は、各言語で一番精度の高い翻訳エンジンを選び、組み合わせていくこと。たとえば、日本語からタイ語への翻訳がグーグル翻訳でうまくいかないとしたら、ほかのエンジンと置き換える、といった具合だ。

すべて最適なエンジンを選べば、論理的には一番精度の高い翻訳機ができる。2代目では、タイやベトナムなど、とくに日本人からの要望が多かったアジア圏の翻訳精度向上に注力した。これらは、総務省傘下のNICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が手がける翻訳エンジンの一部を採用している。

――2018年10月からは、アメリカでもポケトークの販売を始めました。英語圏でも、翻訳機のニーズはあるのですか。

今、アメリカ人が中国に出張する機会が増えているが、現地に行くとあまりの英語の通じなさにがく然とするようだ。アメリカに加えて、地域の中に複数の言語があるアジアやヨーロッパでも順次発売をしていきたい。今年中にはかなりの国で売られるようになると思う。初代は国内での販売権しか持っていなかったが、2代目のIP(知的財産権)はすべて当社が持っているので、世界中で自由に展開することが可能だ。当社の売上高は今ほとんど国内だが、ポケトークをもってグローバルでも成功したい。


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