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こうした政権と民主党の現在のつばぜり合いはともかく、このままでは、現在時限停止されている債務上限が、3月1日から復活する。上限が議会によって引き上げられないと、アメリカ政府は新規に国債を発行することができない(借り換えは可能)。政府の当座の資金繰りについては、年金会計などからの転用により「数カ月はもつ」と推察されているが、その限界を超えても議会審議が膠着状況に陥れば、政府の資金繰りがつかず、最悪デフォルトすることになる。

米国債がデフォルトするような展開は、与野党含め誰も望まないため、最終的には議会は債務上限を引き上げるだろう。しかしぎりぎりまで、上限引き上げが政争の具となり、揉める展開が続けば、米長期債市場がデフォルト(債務不履行)の可能性を懸念したり、もしくは格付け会社が米国債の格下げを行なう展開も否定できなくなる。すると、市場が連銀の利上げはもうない、と信じ込み続けても、長期金利がこうした理由で「悪い金利上昇」となり、それがアメリカの経済や株価の重石となることもありうるだろう。

日経平均はようやく2万1000円を超えたが・・・

さて、日本株だが、日経平均株価は、これまで何度も超えることができなかった2万1000円の節目を、先週はいったん上抜けた。先週末は、前述の米小売売上高の減少を受けた米株安や米ドル安から、2万1000円割れとなっているが、同日のアメリカの株価上昇から、今週初は再度2万1000円を超えて始まる展開が見込まれる。

ただ、述べたように、アメリカの株価は期待が先行しすぎて実態悪とのギャップが生じており、いずれは米株安・米ドル安が進むだろう。そうした流れに抗して、日本株が逆行高するだけの力は、日本のマクロ経済を見ても企業収益を見ても、見いだせない。むしろ企業収益見通しについては、企業側もアナリストも下方修正が優勢となっている。

一般的に市場においては、株式市況が今のように期待し過ぎの状況に陥っても、それがさらに期待し過ぎになり、もっと期待し過ぎになる、ということは、しばしば生じる。このため短期的には、アメリカの株価と並行的に、日経平均が2万1000円超で上値追いの様相を強めることもありうるだろう。

しかし中期的には、アメリカ発の景気悪化を受けて、日米とも株価が大きく下落していく、という見通しは変わらない。こうした背景を踏まえ、今週の日経平均の予想レンジは、2万0500?2万1400円とする。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月?2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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