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 会社経営はさまざまなピンチに見舞われる。父の町工場を継いだ益山明子さん(59)=鳥取市=が大きな危機に直面したのは4年前。途方に暮れ、夜の鳥取砂丘で満天の星を見上げていたら、視線の先に心が向かった。そうだ、宇宙関連の部品をつくろう――。

 町工場が集まるものづくりのまち、大阪府東大阪市で生まれた。小学生の時、父の仕事の都合で鳥取市に移住。父は金型をつくる会社を起こし、数人の職人たちを率いた。「私はバリバリの文系。幼い頃は保育士になれればと思っていた」

 鳥取三洋電機(当時)で経理の仕事をした後、27歳の時に父の会社に入った。事務員から始め、次第に製造にも関わるように。会社も金型製造から試作品の製作、部品加工へと業態を転換した。

 2009年6月、父が心労などで倒れ、73歳で亡くなった。前年のリーマン・ショックで多くの製造業者が大打撃を受けていた。「会社を継ぐことは考えていなかったけど、寝ずに頑張る両親の姿をずっと見ていた。なんとかしたかった」。父の葬儀を前に、自分が後を継ぐと決めた。

「こんな仕事」と去った社員

 社名は「益山製作所」から「MASUYAMA―MFG」に変えた。MFGはマニファクチャリング(製造)の略。父が大切にしてきた名を残しつつ、自分たちの手でものをつくり出すイメージを打ち出したかった。

 ただ、波は高かった。男性中心の業界。営業先では「図面、読める?」と聞かれた。図面を見て加工方法をイメージできるようになるため、大量に買い込んだ消しゴムに色鉛筆で線を引き、小刀で削って立体を再現することに取り組んだ。

 そんなある日のこと。金属を…

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この記事を書いた人
富田祥広
鳥取総局
専門・関心分野
社会、ルポルタージュ


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