2023年に和歌山市で岸田文雄前首相の演説会場に爆発物を投げ込んだとして、岸田氏らに対する殺人未遂や爆発物取締罰則違反など五つの罪に問われた無職木村隆二被告(25)の裁判員裁判が5日、和歌山地裁(福島恵子裁判長)で開かれた。事件の捜査を担当した警察官の証人尋問が実施された。

警察官は現場の実況見分で指揮を執り、尋問で爆発地点の近くにある事務所の土台部分のコンクリートに爆発物が衝突した際にできたとみられる傷が二つあり、かなりの衝撃がないと痕跡は生まれないと証言。二つの傷痕の距離は約20センチで、被告が投げ込んだとされるパイプ状の爆発物の長さと一致すると述べた。現場を写した動画も再生され、爆発前には傷がなかったことも確認された。

被告側は4日の初公判で殺意を否認。選挙制度に不満を持ち、有名な政治家がいるところで注目を浴び、自分の考えを知ってもらおうとしたと動機を説明した。

起訴状などによると、被告は23年4月15日、和歌山市の雑賀崎漁港で、衆院和歌山1区補欠選挙の応援に訪れていた岸田氏らを殺害する目的で手製の爆発物を演説会場に投げて爆発させ、近くにいた警察官と聴衆の計2人に軽傷を負わせたなどとしている。岸田氏にけがはなかった。(共同)