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花道を引き揚げ、出迎えた付け人や親方らに祝福されると、御嶽海はじわじわと初優勝の実感が込み上げてきた。そしてテレビのインタビュールームで目頭が熱くなった。「周りの声援を聞いて、優勝しなきゃいけないという感じになって……。何とか勝てました……」。初土俵から3年4カ月。エリート街道を歩んできた25歳が重圧を乗り越え、賜杯に到達した。

勝てば優勝が決まる一番でも、抜群の相撲勘を見せた。左下手を引くとさらに深い位置に持ち直す。右は巻き替えると同時にかいなを返して栃煌山の攻め手を封じ、その瞬間に腰を落としながら前に出て危なげなく寄り切る。

一発勝負のトーナメントで学生時代に培った集中力、勝負どころの見極め、そして鋭い出足からの速攻――。御嶽海は「(今場所は)自分の相撲をしっかり取った」と胸を張った。

学生横綱、アマ横綱の輝かしいタイトルを引っ提げて東洋大から幕下10枚目格付け出しでデビューした。幕下、十両をそれぞれ2場所で通過、トントン拍子で三役まできたが、そこから足踏みした。先場所まで9場所務めて2桁勝利には一度も届かず。5連敗、6連敗の屈辱も味わった。「我慢するしかなかった。いつか絶対(に成績を残す)という思いでやってきた」。上位にはね返され、研究を重ね、耐えた日々が実を結んだ。

全3横綱に1大関が休場した異例の場所での優勝。その価値を問う声は出るだろうが、優勝はフロックではなかったと、土俵で証明していけばいい。八角理事長(元横綱北勝海)は次の秋場所が大関とりになるとの認識を示した。真価が問われるのはこれからだ。(金子英介)



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