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【ブエノスアイレス=河浪武史、外山尚之】日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)による財務相・中央銀行総裁会議が、アルゼンチンで21日午前(日本時間21日夜)に開幕した。焦点は米国発の貿易戦争で、ムニューシン米財務長官は21日、一部記者団に「相手国には関税ゼロを要求していく」と改めて主張した。日銀の黒田東彦総裁は「貿易摩擦が収まる議論を期待している」と訴えた。

G20の財務相が集うのはワシントンで開いた4月の会合以来、3カ月ぶりだ。米国は6月に鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を欧州連合(EU)などにも広げ、7月には中国への制裁関税を正式に発動した。各国は即座に米国に報復関税を課すなど、大陸をまたぐ貿易戦争は深刻さを増している。

ムニューシン米財務長官は21日、一部記者団に対して「G20会議は通商問題が主テーマだ。各国には関税ゼロ、非関税障壁もゼロ、補助金もゼロという自由貿易体制を求めていく」と訴えた。中国やEUなどの報復措置で「大豆など一部製品には打撃があるが、マクロ経済全体での影響は出ていない」と強弁した。

ただ、ブエノスアイレスで21日に記者会見した国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、貿易戦争に触れて「最悪のシナリオなら世界経済の成長率を0.5ポイント下押しする」と警鐘を鳴らした。米国や中国へ部品などを輸出する各国への影響も大きく、IMFはアジア新興国が最大0.7ポイント、中南米も同0.6ポイント成長率が下振れすると分析する。貿易戦争はG20を直撃し、各国とも傍観が許されなくなった。

トランプ米大統領はツイッターなどで「強いドルが我々の競争力を奪っている」と主張し、ドル高是正策もG20会議の争点となってきた。ムニューシン氏は21日に「強いドルは国益にかなう」と述べて沈静化に努めつつ、中国の人民元安などを「注視している」と指摘して各国の通貨安誘導を強くけん制した。

日本からは麻生太郎財務相と日銀の黒田総裁が出席する。黒田氏は21日に記者団に対し、米国の利上げによって「アルゼンチンやトルコなど一部新興国に影響がでている」と指摘。為替相場については「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映して安定的に推移するのがのぞましい」と主張した。



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