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【イスタンブール=佐野彰洋】ギリシャ議会は11日、2019年1月から実施予定だった年金給付の追加削減を撤回する法案を賛成多数で可決した。ギリシャは8月に欧州連合(EU)の金融支援から脱却した。財政への監視は続いているが、黒字の規模が年金削減を決めた当時の想定を上回っており、撤回は可能と判断した。EU側も撤回を認めている。

チプラス政権は19年秋で任期満了を迎える。最大野党に支持率で先行を許しており、削減撤回を支持回復につなげたいとの思惑もある。

ギリシャでは、債務危機が始まった10年以降、財政再建のため年金削減が繰り返され、削減率は一部で40%を超えた。今回予定されていた削減規模は国内総生産(GDP)比で1%に達し、140万人の年金受給者に影響が及ぶとみられていた。

失業率が20%近いギリシャでは、多くの高齢者が年金収入で子や孫世代の生活も支える。追加削減は消費の落ち込みや格差の拡大につながるとの懸念もあった。

11日の議会討論でチプラス首相は「国民の犠牲が報われる時が来た」と述べ、決定を正当化した。一方、最大野党・新民主主義党(ND)のミツォタキス党首は「慈善家の仮面をかぶっている」とチプラス氏を非難した。19年の総選挙での政権奪取に意欲を示した。



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